「エントリ一眼・キットレンズで星空撮影」第5回です。
この連載も今回で最終回。ラストを飾るのはミラーレスの雄、ソニーの「α6000」です。
今、一番ミラーレス一眼の製品ラインナップが充実しているのがソニーでしょう。フルサイズのα7シリーズ、α9、そしてAPS-Cのα6000シリーズ。ハイエンドからローエンドまでを広くカバーしています。
今回レビューした「α6000」は、APS-Cフォーマットのエントリモデル。レンズは15-50mm F3.4-5.6のキットレンズです。その実力は?!前回に続き、今回もモンゴルに遠征して撮影した作例でお届けします。
今回のモンゴル遠征中、昼間の撮影では主にα6000を使用しました。小型軽量でAFも高速、予備電池を十分用意さえすれば、旅行のスナップではもう何の不満もありません。「お手軽カメラはエントリクラスを狙え」と断言してもいいかもしれません。
デジタルネイティブなフォルム・α6000シリーズ
ソニーのα6000シリーズは、フィルムカメラからの伝統のフォルムを離れ、いかにもデジタルカメラ然としたスタイリング。特徴的な大きなグリップは持ちやすく、小さなボディを安定してホールドできます。
キットレンズの15-50mmF3.5-5.6を装着したところ。レンズは沈胴式で電源OFF時にはもう一段短くなります。
液晶モニタはティルト式。ボディ左端にはEVFがあります。重量は電池、カード込みで344g(ボディのみ)と軽量です。
コンパクトなカメラは、小さすぎると大きめのレンズとのバランスが悪くなることがありますが、α6000ではそんな心配も少ないでしょう。
ただし、上の画像を見るとわかるように、非常にボディが薄型のため、三脚使用時に雲台との接触面積が小さくなってしまいます。三脚座のない重量級のレンズとの組み合わせには注意が必要でしょう。
優秀な高感度性能
この連載でさんざん書いているように、キットレンズの標準ズームの解放F値「3.5」は、星空の撮影にはやや力不足です。星が流れない範囲の露出時間(30秒前後)では、ISO値をかなり上げないと露出不足になります。
上の作例はISOを6400まで上げています。少し前なら、フルサイズでも無理めと考えられていたような高ISO値です。
少し古い星空撮影のガイドブックやWeb解説では「ISO値を上げすぎるのはよくない」と書かれています。これはある意味真理で、センサーの限界に近い高感度域では、無理なノイズ処理などで画像が荒れてしまうことがあったのです。
ところが、最新のセンサーではその限界がかなり上がっています。α6000の場合、ISO6400までは普通に使って問題ないと感じました。
上の、ノイズ処理なし・ありの等倍比較画像を見るとわかるように、ノイズ処理なしでは色ノイズがさすがに目立ちます。しかし、軽く(+20)ノイズ低減をかけることでほとんど気にならないレベルになりました。この結果なら、ISO12800でもよかったかもしれません。また「長秒時ノイズ低減」はOFFにしていますが、その差はほとんどありません。
α6000は、販売中のソニーのAPS-Cモデルの中では最もローエンドの製品ですが、それでもこの高性能ぶりです。
CMOSイメージセンサーの技術が進んだため、最新のデジタルカメラでは、純粋な「画質」はカメラのランクにはあまり関係なくなっているのでしょう。(ただし星空のような低照度域では「センサーサイズ」による差は歴然とあります)
「手振れ補正の搭載」「高速なAF」「動画性能」などの他の機能にこだわらないのなら、星空の撮影用途には「あえてローエンドモデルを選択する」という作戦もアリではないかと感じました。
※本文内の価格情報は2019年10月29日時点でのAmazon.co.jpの価格です。
日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。