「エントリ一眼・キットレンズで星空撮影」第4回です。
今回取り上げるのは、GFXを別にすればAPS-C一筋、ぶれない路線を邁進するFUJIFILMの「X-T100」です。
いきなり関係ない画像で恐縮ですが…ラクダです。
実は、今回と次回はなんとモンゴルに遠征して撮影してきたリザルトです!
あいにく天気は今ひとつだったのですが、日本と違って空の暗さは圧倒的。そんな環境でちょっぴりガチ系に振った使い方と作例もお届けします!
一眼レフスタイルのエントリ機・X-T100
X-T100の外観。ミラーレスカメラですが、クラシックな一眼レフと同じようなスタイリング。
フジのX-シリーズのカメラは、X-T100のような「一眼レフスタイル」の製品と、X-EシリーズやX-Proシリーズのような「レンジファインダースタイル」の2種類がありますが、X-T100は「一眼レフスタイル」のラインナップの中で、最も低価格のエントリモデルになります。
エントリモデルとはいえ、一昔前の「エントリモデル」にあったような「上位機種との越えられない壁」は感じられません。機能は豊富で操作の自由度も高い。AF・連写速度・EVFの精細度・センサーが「X-TRANS」ではないなど、一部を除けば上位機種と遜色のないカメラです。
フジのカメラには、星空の撮影で多用する「ライブビューの拡大表示」の「アイコン」が操作ボタンに描かれておらず、いきなり触るとどう操作していいのか面食らうのですが、この操作は「コマンドダイヤル」に割り当てられています。ライブビュー状態でこのダイヤルを下に押し込むと拡大表示となり、ダイヤルで拡大率を変更することができます。慣れてしまえば使いやすい操作だと感じました。
X-T100の背面モニタはタッチパネル式になっていて、AM/MFの切替や、スワイプ操作を特定の機能に割り当てるなど、さまざまな操作を行うことができます。しかし、タッチパネルは便利な反面、すばやく操作できるようになるにはけっこう慣れが必要です。
前回の記事でも書きましたが、デジタルカメラの操作体系は各社各機種でさまざまです。星空の撮影では、マニュアルフォーカスやインターバル撮影、2秒セルフタイマー、長秒ノイズ低減など、昼間の撮影ではあまり使わない機能を使用することが多いので、本格的に使う前にしっかり機能を確認・練習しておきましょう。
シャッター速度がB(バルブ)を除くと30秒までなのが残念ですが、インターバル撮影が可能。静止画だけでなく、タイムラプス動画を同時記録することも可能です。リモコンなしでタイムラプスが撮影できるのは、星空の撮影ではとても便利な機能です。
赤に強いフジ
フジのカメラの大きな特長は、星空の撮影で重要なアクセントになる「赤い星雲」がよく写ること。上の作例は「夏の大三角」ですが、画面の左下の赤い雲のような天体(北アメリカ星雲)などがそれにあたります。
この赤い星雲は、科学的には電離した水素原子が「輝線スペクトル」で光っているもの。天の川沿いには、このような「電離水素」の雲があちこちに分布していて、天文ファンにとっては大事に撮りたい「宇宙のアクセント」のひとつ。天文ファンでなくても、よりカラフルな宇宙の姿が撮れるのは嬉しいことでしょう。
ところが、この赤い星雲の写り方は、デジタルカメラのセンサーの前に装着されている「IRカットフィルター」の特性によって大きく変わってくるのです。
上のグラフは、デジタルカメラの「IRカットフィルター」の波長特性を模式的に示したもの。デジタルカメラのイメージセンサーは、人間の眼より光を感じる波長の幅が広く、人間の眼が感じない「近赤外線」にも本来感度があります。この特性を人間の感覚に近づけるために「人間の眼で感じない・感じにくい」光をカットしてしまうのが、「IRカットフィルター」の役割。このフィルターによって、波長「650nm付近」より長い赤色の光はセンサーには届きません。
ところが「赤い星雲」の主成分の光の波長は656nmで、この境界付近にあります。このため、ほんのわずかなフィルターの特性の差で、「赤い星雲」の光の透過率が大きく変わってきてしまうのです。
ざっくり筆者の感覚値では、ほとんどのカメラのHα線の透過率は20%がせいぜい、というところでしょうか。一方で、フジのカメラの場合、少なくとも50%くらいの感度はある気がします(具体的な数値は公表されていないので不明ですが、もう少し高いかもしれません)。
これだけでも、星景写真・天体写真用途では、フジのカメラを選ぶ大きな理由になります。
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日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。