みなさま、ご無沙汰しておりました!
久しぶりの登場となります。天文リフレクションズ編集長の山口です。
暖かくなり、いよいよこれから星空撮影のシーズンです。
カメラを手にして「これから星空を撮影してみたい!」という方も多いのではないでしょうか。
しかし…先日、一般ニュースでも大きく取り上げられた痛ましい事故(新潟県の星峠の件)がありました。
報道では、「一部の愛好家ルールに問題?」というような切り口で取り上げられることもありました。鉄道にしろ蛍にしろ、押し寄せる写真愛好家が引き起こすさまざまな問題については、一人一人がしっかり考えて行動しなければならないことはいうまでもありません。
そこで、今回は「星空撮影マナーガイド」という形で、トリセツ100万人読者のための「星空撮影をより安全に、気持ちよく楽しむ方法」についてまとめてみました!
以前「天体撮影のトリセツ【第七回】」でも書きましたが、基本はほんのわずかです。
いくつかの知っておくべきことを押さえておけば、後は一人一人の心がけだけ。
ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです!
(本記事は上記の記事を大幅に加筆、改訂したものです。)
ライトは安全のために必要なもの
まず第一に、「安全確保」のためのライトの点灯は遠慮する必要はありません。このことを強調しておきたいと思います。
移動の際のライトは遠慮せずに灯そう
星空の撮影をするとき、たいていの場合そこは暗い場所です。
暗い場所にはさまざまな危険が存在します。ガードレールのない林道、ダートでの尖った岩や障害物。撮影現場では足場が悪いこともあります。昼間なら問題にならない駐車場の車止めやチェーン、側溝なども暗闇では危険な要素。最近では熊やイノシシなどの野生動物もかなりヤバい状況です。
まずは、自分の安全をしっかり確保しましょう。そのためには、安全を確認できるくらいの明るさのライトの点灯が必須です。
車のヘッドライトは、エンジンをかけて移動しているときは消してはいけません。むしろ、消灯して移動する方が、運転手にとっても周囲の人にとっても、はるかに危険です。
事故が起きてしまうと取りかえしのつかないことになるだけでなく、地元の方にも大きな迷惑をかけることになります。
車のライトだけではなく、フィールドを移動する際のライトの点灯も同様です。筆者の知人でも、ライトを灯さずに移動したばかりに大きなケガをしてしまった人が何人もいます。
繰り返しますが、自分の安全を守るためのライトは遠慮する必要はありません。
両手が使えるヘッドライトを活用しよう
頭に装着できるヘッドライト。明るさが調整できるものが便利です。
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フィールドで星空を撮影する場合は、頭に取り付けられて両手が自由になる「ヘッドライト」が便利です。
山道の急登や岩場、手で荷物を持って移動するときなどは特に重宝します。
その一方で、ヘッドライトには「足元を照らしにくい」という欠点もあります。
普通に「二足歩行」できるような場所、特に毒蛇がいそうな草むらや、ゴツゴツした砂利道など足場の悪い場所、階段などでは、頭から外して手に持って、足元を照らしながら歩く方が安全です。状況によって使い分けるのが賢い使い方です。
また、ヘッドライトを付けていると、眼を向けた方向を無意識に照らしてしまうことになります。人の集まった撮影スポットの周辺では、周囲の風景や人・カメラを無駄に照らさない意味でも、頭から外して手に持って足元を照らす方がよいでしょう。
不要不急なライトは灯さない
安全のためのライトは必要な一方で、星空にとってはライトは邪魔者です。
星空は昼間の風景のよりもざっくり100万倍も暗く、明るい車のヘッドライトはもちろん、懐中電灯の光や、状況によってはカメラの動作ランプでさえも、その場に居合わせた他の人の邪魔になりうることを意識する必要があります。
ほんのわずかなライトでも星空の撮影には影響が
ライトがどのくらい「邪魔」になるかを作例で見てみましょう。上の画像は星明かりだけの暗闇の中で撮影したものです。真ん中は自然の状態のまま。右と左はそれぞれ白、赤のライトをほんの数秒間点灯した場合。このように、星がよく見える場所ほど、ほんのわずかな人工光でも大きな違いとなって現れてしまうのです。
そこで第二の原則。不要不急なライトは極力灯さない、です。
車のヘッドライトは、撮影現場に着いて停車し安全を確認したら、速やかに消灯しましょう。
停車してしまえば、いつまでもライトを点灯している理由は特にありませんし、自分の眼を暗闇に慣らすためにもライトを完全に消灯して少し(数十秒くらい)時間をおいた方がよいと思います。
ドアの開閉の際に室内灯が灯らないようにしておけば、なおよしです(筆者の車の場合はボタンの長押しで点灯なしになりました)。
移動の際に灯していたライトも、ポイントを決めた後はしっかり消灯し、最小限必要な場合以外は灯さないようにしましょう。
星空を撮る際には、ほんのわずかの光でも悪影響を与えてしまうのです。慣れないうちはまごまごしてライトを灯すことが多くなってしまいますが、慣れればほとんどライトを使わずに操作できるようになります。
人が多い場所にライトが多いのは仕方ない
逆に、通行可能な場所を通行中の車や、フィールドを移動する人などの、「必要なライト」に照らされることは、仕方のないことだと思ってください。
繰り返しになりますが、ライトは星空にとっては邪魔ですが、安全のためには必要なものです。消灯を強制したり、消灯を強制するような「雰囲気」を作ってしまうことは、悲しい事故を起こす結果になってしまいます。
「人が多い場所はライトも多い」。これは街中であろうとフィールドであろうと同じことです。 それは「あるもの」として、受け入れましょう。その上で撮れるものを撮る工夫をするのが一番です。
日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。