【第二章】天体撮影のトリセツ【第二回】

「ポータブル赤道儀」でレベルアップ! (1/2)

2018.02.25
トリセツ編集部/山口千宗
いて座のM8とアンドロメダ星雲M31。|
ポータブル赤道儀があれば、望遠レンズを使った撮影も可能になります。データは本文参照。
いて座のM8とアンドロメダ星雲M31。
ポータブル赤道儀があれば、望遠レンズを使った撮影も可能になります。データは本文参照。 zoom

星空の撮影を始めると、だんだんと欲が出てきます。

もっと天の川を濃く撮りたい。

もっとノイズを減らしたい。

いろいろな天体をもっと大きく撮りたい。

そんな、星空の撮影にハマりはじめたあなたに「ポータブル赤道儀」はいかがでしょう。「ポータブル赤道儀」は、あなたの天体写真をレベルアップさせる強力なアイテムです。今回は「ポータブル赤道儀」のメリットをご紹介します。

「コンパクト赤道儀」と呼ばれることもあります。

露出時間を長くすると星は流れてしまう

なぜポータブル赤道儀が必要になってくるのでしょうか?

それは地球が回っているから。

1日に1回転(自転)する地球、それにあわせて星はどんどん動いているのです。

OLYMPUS EM-5 12mm(換算24mm) F3.5 ISO1600 固定撮影|
明るさ・周辺減光はレタッチで補正しています。
OLYMPUS EM-5 12mm(換算24mm) F3.5 ISO1600 固定撮影
明るさ・周辺減光はレタッチで補正しています。

ポータブル赤道儀を使用せず、カメラを三脚に固定して撮影した場合。

レンズはフルサイズ換算24mm。露出時間は左から15秒、30秒、60秒。

露出時間を長くするとノイズが減って星の写りが良くなっていきますが、あまり長くすると星が流れて写ってしまうのがわかります。

デジタルカメラの暗所性能の限界近くを使う星空の撮影では、できるだけ長い露出時間をかけたいもの。

でも「地球が回っている」がために、星を点で写せる露出時間には限界があるのです。

いて座の散光星雲M8。EOS M EF300mm F2.8 8秒 ISO800 光害カットフィルター使用。福岡市内で撮影
いて座の散光星雲M8。
EOS M EF300mm F2.8 8秒 ISO800 光害カットフィルター使用。福岡市内で撮影zoom

レンズの焦点距離が長くなると(望遠レンズになると)この影響はますます大きくなります。上の画像は300mmの望遠レンズで撮影したものですが、固定撮影の場合は8秒露出でも完全に流れてしまいました。

右はポータブル赤道儀を使用し「追尾撮影」したもの。こちらはちゃんと点に写っていますね!

星を流さずに撮れる「赤道儀」

左:筆者の使用している「ビクセン ポラリエ」ポータブル赤道儀。小型のカメラボディくらいの大きさです。|右:同じカメラを使用した固定撮影の場合。
左:筆者の使用している「ビクセン ポラリエ」ポータブル赤道儀。小型のカメラボディくらいの大きさです。
右:同じカメラを使用した固定撮影の場合。

星を流さずに写せる「赤道儀」。

その原理は「地球の回転で星が流れるのなら、撮影機材をそれと逆に回転すれば星は止められる」というもの。

上の画像は筆者の使用しているシステム。カメラと三脚の間に取り付けられた箱のようなものが「ポータブル赤道儀」です。正確なギアとモーターを内蔵し、雲台を取り付けた軸(「極軸」と呼びます)が回転するようになっています。

これまで天体望遠鏡を搭載するための本格的な赤道儀は、とても重く高価格でマニア専用のアイテムでした。ところが、最近ではこのような「カメラレンズで星空を撮影する」ための小型の赤道儀(「ポータブル赤道儀」または「コンパクト赤道儀」)が各社から発売されています。

カメラ一台分くらいの大きさで、持ち運びも容易、お値段は数万円からとお手軽です。

ポータブル赤道儀の活用シーン

では、どんなときにポータブル赤道儀が役に立つのでしょうか。

その活用シーンをいくつかご紹介しましょう。

天の川をもっと濃く撮りたい。作品のクオリティを上げたい。

EOS 5D Mark III 24mm F2.8 ISO3200 120秒|
Digital Photo Professionalでカラーバランス、トーンカーブ、彩度調整|ポータブル赤道儀使用 宮崎県県三秀台にて
EOS 5D Mark III 24mm F2.8 ISO3200 120秒
Digital Photo Professionalでカラーバランス、トーンカーブ、彩度調整
ポータブル赤道儀使用 宮崎県県三秀台にてzoom

上の作例は24mmの広角レンズで撮った夏の天の川。

35mm換算24mmレンズの場合、少し流れるのを我慢しても、固定撮影は30秒露出が限界。ポータブル赤道儀を使用し、その4倍の120秒の露出をかけることで、天の川を濃く写すことができました。

また、固定撮影で長めの露出をかけると、小さな星が米つぶのように流れてしまって、解像感・サラサラ感が失われていまいます。ポータブル赤道儀を使えば、星を流さずに露出時間を延ばしてよりクオリティの高い画像を得ることができます。

もっと大きく写したい。

左:EOS M 200mm F4 ISO3200 30秒|
右:EOS 5D Mark III 150mm F2.8 ISO3200 120秒|ポータブル赤道儀使用 いずれも1枚撮り
左:EOS M 200mm F4 ISO3200 30秒
右:EOS 5D Mark III 150mm F2.8 ISO3200 120秒
ポータブル赤道儀使用 いずれも1枚撮りzoom

オリオン大星雲やアンドロメダ星雲(銀河)などの有名な天体を撮る場合、望遠レンズで大きく写したくなります。でも、固定撮影で望遠レンズを使うとすぐに流れてしまって無理。

ポータブル赤道儀を使えば、機材とレンズの組み合わせにもよりますが、数分くらいまではじゅうぶんに露出が可能。撮影の難易度は上がりますが、暗い小さな天体をしっかり写すことができます。

さらに「コンポジット」という技を使えば、飛躍的に画質を上げることができますが、そのお話はまた別の機会で。

レンズの暗さをカバーする。

左:EOS 6D+SIGMA 24mm F1.4Art 右:OLYMPUS EM-5+12-50mm F3.4-6.3|
天体適性からみて、明るいレンズとフルサイズセンサーの優位性は不動。でも、赤道儀を使えばその差を大きく縮めることができます。
左:EOS 6D+SIGMA 24mm F1.4Art 右:OLYMPUS EM-5+12-50mm F3.4-6.3
天体適性からみて、明るいレンズとフルサイズセンサーの優位性は不動。
でも、赤道儀を使えばその差を大きく縮めることができます。

カメラとセットで販売されているいわゆる「キットレンズ」のF値は、広角端でもF3.5程度。これでも星空は撮れるのですが、微妙に「暗い」感じは否めません。

そこでポータブル赤道儀を使えば、露出時間を伸ばすことで、明るいレンズに負けないクオリティを得ることができます。



山口千宗
【天文リフレクションズ/山口千宗】

日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。