天体撮影の世界にようこそ。「天文リフレクションズ」編集長の山口です。
連載も第六回目です。少し回り道をしてきましたが、ここまでの記事をお読みいただいた方なら、星空撮影まではもうあと一歩です。
これまでの復習をしつつ、今回は星空撮影の基本をお話しします。
星空は広角で撮ろう
星空撮影の基本は広角レンズ。
35mmフルサイズ換算で20mm〜28mmくらいの焦点距離が入門者にとって一番使いやすいレンジです。
理由は3つあります。
1.星空は広い
星は夜空いっぱいに広がっています。
圧倒的な星空の下の感動を表現するには、広い範囲が写る広角レンズが最適。
広角レンズなら、空を横切って流れる天の川の全体を写すことができますし、地上の風景を取り入れることも容易です。
でも、広すぎると今度は逆に使いこなしが難しくなります。20〜28mmぐらいが一番使いやすい広さです。
2.キットレンズの場合、広角端が一番明るい
いちばん普及しているカメラとセットになった「キットレンズ」の場合、広角側が一番F値が明るく(F3.5前後)、望遠側では暗く(F5.6前後)なってしまいます。
星空の撮影ではレンズの明るさが最も重要。暗い望遠側より明るい広角側が有利なのです
3.星が流れにくい
太陽が東から昇って西に沈んでいくのと同様に、星も1日で夜空を一周します。
1時間でその角度は15度。
そのため、シャッターを開けたまま撮影すると、星が動いて線状に流れてしまいます。
レンズの焦点距離が長くなるほど、この流れは大きくなり、流さずに撮るにはより露出時間を短くしなければなりません。
このため、できるだけ露出時間を稼ぎたい星空の撮影では、広角レンズほど有利になるのです。
(星に合わせてカメラを動かす「赤道儀」というものを使えば流れないように撮影できるのですが、これについてはまた別の機会でお話しできればと思います。)
カメラの設定
これまでカメラの細かな設定については特にお話ししていませんでしたが、星空撮影の場合はいくつか注意しておくことがあります。
ひとつめは、記録画像の形式を「RAWとjpegの同時記録」にしておくこと。
(この呼び名もメーカーでまちまちなので、マニュアルでよく確認してください。)
この設定にすると、異なる形式の画像ファイルが2つ、メモリカードに記録される形になります。
「RAW形式」とは、センサーに記録された情報を「生のまま」保持しているファイル形式。
jpeg形式よりもファイルサイズが大きく取り扱いにも技術が必要なのですが、レタッチの自由度が高くjpegよりも美しい仕上がりが期待できます。
RAW形式のメリットや扱い方については、別の回で詳しくお話します。
今の段階では「jpegに加えて、将来のためにRAWでも記録しておく」とお考えください
ふたつめは、長秒時ノイズ低減をOFFにしておくこと。
これがONになっていると、撮影後に露出時間と同じだけの時間待たされてしまいます。
(カメラの初期設定ではONになっていることが多いようです)
画質を追求する場合はONにしてもいいのですが、びっくりするほどの効果ははっきりいってありません。
ほん少しの違いのために待たされるよりは、サクサク撮れた方がはるかにメリットです。切っておきます。
そのほか、ホワイトバランスや高感度ノイズ低減をはじめ、メーカーそれぞれの細かな設定がありますが、「RAW形式」で記録さえしておけば後から自由に変更がききますので、特に意識する必要はありません
日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。