「エントリ一眼・キットレンズで星空撮影」第2回です。
今回取り上げるのはパナソニックの「LUMIX DC-GF90」、たぶん一番「エントリ機らしい」カメラです。
この連載のコンセプトは「カメラ選びのための情報」ではありません。すでに何かの縁でカメラを手にした人に、お手持ちのカメラを活用して「星空を撮る楽しさ」を知ってほしい、というのが最大の狙いです。
細かくいえば、星空撮影に向いているカメラもあれば、どちらかといえば星空撮影が苦手なカメラもあります。
でも、使い方を間違えなければ、どんなカメラでもちゃんと星空は撮れます!ちょっと工夫すれば、もっとよく写ります。
そんなノウハウをお話しできればと思います。
これは小さい!コンパクトボディの魅力
LUMIX DC-GF90は、パナソニックのM4/3(マイクロフォーサーズ)のエントリーモデルです。今回使用したモデルはシルバーとオレンジのなかなかオシャレなカラーです。
手に取ってみると、コンパクトなサイズに驚かされます。ボディの重量はたったの270g(バッテリー、メモリカード含む)。レンズを含めても400g足らずで、レンズ交換可能なカメラの中では最も軽量・コンパクトな部類に属するでしょう。
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今回使用したのは「Wレンズキット」。12mm-32mmF3.5-5.6(フルサイズ換算24mm〜64mm)の標準ズームに加えて、明るい単焦点レンズ「25mmF1.7」が付属します。
ボディを小型化するためなのか、メモリカードは「マイクロSD」です。16Gのカードでもそうそうは容量不足にはならないと思いますが、容量が大きめのカードを使用するのが吉でしょう。小型のバッテリの持ちはあまりよくありません。予備電池の携帯を推奨します。
エントリーモデルのカメラの定番である「標準ズーム」では、解放F値は「F3.5」が普通。この明るさは星の撮影には微妙に力不足な点があるのですが、今回使用した「Wレンズキット」モデルには25mmF1.7の明るい単焦点レンズが含まれており、星空の撮影では大いに魅力的。このレンズがどれだけ活躍してくれるかが今回のレビューの注目点のひとつでもあります。
天の川を撮ってみた
露出不足に注意する
まずは三脚に固定して天の川を撮ってみました。撮影地は天の川が普通によく見える山の展望台です。12-35mmのズームレンズの「広角端」12mmの絞り開放で、40秒の露出をかけました。
少し雲が流れる天候でしたが、左上から右下まで流れているのが天の川です。(左の山の上の明るい部分は雲)
前回の記事でも書きましたが、天の川が肉眼でもよく見えるような空の場合、露出時間の基本は「F2.8 30秒 ISO3200」です。解放F値がF3.5のレンズだったので、計算上は50秒露出すべきですが、あまり星を流したくないので露出時間を40秒としました。
上の画像の左が「JPEG撮って出し」ですが、若干露出不足気味です。
そこで、レタッチソフトで露出補正を+1段分かけたのが右の画像です。
星空の撮影の背景の明るさは、表現意図や好みもあり、適切な明るさは一概にはいえません。しかし、空の条件がよい場所では、「基本」の露出時間である「F2.8 30秒 ISO3200」では不足気味になる場合もあることに注意が必要です。
ある程度の露出不足はこのようにレタッチで補正できますが、あまり極端な露出不足になってしまうとノイズが浮きすぎてレタッチでの救済には限界があります。暗いレンズで取る場合は、少々星が流れてしまっても露出時間は長めにする方がよい結果が得られます。
カラーバランスの補正
この作例では、カメラの設定を「オートホワイトバランス」で撮影しました。
最近のカメラのホワイトバランスはみな優秀なのですが、星空の撮影のような暗い条件ではオートホワイトバランスでは思った色にならない場合もあります。今回の作例の場合は若干暖色系に偏っているようです(左)。
レタッチソフトウェアで、色温度を「5250K」から「4750K」に補正したものが右の画像です。
星空の撮影では、空の条件によっても大きく変わるため、カラーバランスをカメラの設定だけで一発で決めるのは至難の技です。初心者向けには「オートホワイトバランス」で撮影して、レタッチソフトで好みに合わせて調整するのが一番無難だと思います。
「長秒ノイズ低減」を活用する
このカメラを使用する場合、ぜひとも行っておきたいカメラの設定があります。「長秒ノイズ除去」です。
「長秒ノイズ除去」とは、数秒を超える長時間の露出の際に発生する「輝点ノイズ」を除去するための設定です。
この設定を行うと、撮影後にシャッターを閉じた状態で同じ露出時間の撮影が自動的に行われ、2枚の画像を「引き算」することでノイズの除去が行われます。
上の画像は「長秒ノイズ除去」のあるなしの比較。「輝点ノイズ(原色のポチポチ)」がキレイになくなっているのがわかります。
「長秒ノイズ除去」を使用すると、撮影後露出時間と同じだけ「待たされる」ため、テンポよく撮影できなくなるもどかしさがあります。そのため、なるべくなら使いたくないところなのですが、この違いを見るとやらないわけにはいきません。
輝点ノイズの量は「温度」によっても大きな違いが出てきます。上の画像は外気温が夏場の常温相当(28°C)と、冬場の野外相当(0°C)の長秒ノイズを比較したものですが、「輝点ノイズ」のまったく出方が異なることがわかります。一般に温度が高くなるほど、カメラのノイズは多くなるのです。
「輝点ノイズ」を減少させる「長秒ノイズ除去」機能は、ほとんどの一眼デジタルカメラが持っている機能ですが、「輝点ノイズ」の出方はカメラ・個体によっても差があり、ほとんど気にならないレベルのものもあります。輝点ノイズが少ないカメラであっても、気温の高い夏場は「長秒ノイズ除去」の設定はONにしたほうがよいかもしれません。逆に気温の低い冬場や、元々ノイズの少ないカメラであれば、撮影のフットワークを悪くする「長秒ノイズ除去」は使わないという判断もアリです。
このあたりは、ご自分の個体で実際に撮影して比較してみることをオススメします。
ピント合わせ
写真の命はピント。主題となる対象のピントが外れていると、どんな写真であれ台無しになってしまいます。
上の画像は今回撮影したときの「ピンボケ失敗作」の例。こんな写真を量産してしまわないように、ピント合わせはしっかり練習して慎重に合わせましょう。
高級な上位機種の場合、星のような暗い対象でもオートフォーカスが可能な製品もありますが、エントリクラスのミラーレスカメラではそうはいきません。今回使用した製品の場合、かなり明るい星でないとピント合わせができませんでした。上の画像は「木星」でピント合わせをしているところ。明るい一等星よりも10倍くらい明るい木星ですが、それでもモニター上ではほんの小さな点にしかすぎません。
しかも、ピントが合っていない状態だと、星がどこにあるかさえもわかりません。そんなときは、近隣の街灯や自動販売機など(なるべく遠い方がよい)や、遠くの明るい街の灯でピント合わせをするのも一手です。
また、レンズによっては「ピントリング」が存在しないものがあります。このカメラの場合、12-35mmのズームレンズはピントリングではなく十字キーの操作でピントを合わせる形でした。慣れれば小さなピントリングを回すよりも使いやすいかもしれませんが、初見ではなかなか操作しづらいことでしょう。マニュアルフォーカスでのピント合わせの操作は、事前にしっかり確認・練習しておきましょう。
※本文内の価格情報は2019年8月22日時点でのAmazon.co.jpの価格です。
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日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。