優秀なキットレンズ
X-T100のキットレンズは「フジノンレンズ XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」。重量わずか135gの小型レンズでありながら光学手振れ補正を搭載。広角端が15mm(フルサイズ換算23mm)と他社のキットレンズより広角寄りなのも星空撮影向け。
性能もなかなか上々です。解放F3.5で使用しても特に不満はありません。今回使用したキットレンズの中では一番トータルバランスがよいかもしれません。
それにしても「キットレンズ・標準ズーム」の高性能化には感心しました。筆者は2004年にデジカメデビューしたのですが、そのときの標準ズームは広角端・絞り解放では倍率色収差も像の流れも大きくて、星空の撮影にはちょっと厳しいだろうと思ったものですが、最新のキットレンズは解放でも安心して使えるものが多くなりました。
地上風景の黒ツブレを回避するレタッチ法
今回モンゴルの漆黒の空を撮影して痛感したのは、撮って出しのままでは、上の左の画像のように地上風景が真っ暗にしか写らないこと。日本国内で撮影する場合は「街灯り」で空も風景もある程度照らされているため、それなりに写ってくれるのですが、街灯りのまったくないモンゴルでは、露出1段〜2段くらいは空が暗い気がします。
このため、シャドウを「絞り出す」レタッチが必要になります。その手順を簡単にご説明しましょう。
ヒストグラムを見ると明らかに露出不足です。ノイズが浮くのは我慢して、露光量を+1.20して全体を明るくします。
また、黒くツブれたシャドウを+83しました。これはかなりのMAXレタッチです。空の明るい日本の空ではここまで上げることは少ないものの、「シャドウの持ち上げ」はぜひ覚えておきたい補正です。
さらに明瞭度を+31してシャドウをさらに持ち上げるとともに、雲を強調しました。「明瞭度」は「ローカルコントラスト」とも呼ばれる補正ですが、輝度差の大きな被写体の場合でもあまり「黒ツブレ」「白飛び」することなくコントラストを適切に上げてくれる補正です。これも星空の撮影ではとても有効なものです。
「夜の暗さ」をなるべく失わない方針でこのようなレタッチとしましたが、雲の色が不自然に(とはいってもこれが自然の色なのですが)濃くなってしまったので、彩度は+30くらいにとどめて、露光量を+1.50くらいにしたほうがより自然になるかもしれません。このへんはいろいろ試してみて、最後は好みで選ぶとよいと思います。
この画面には表示されていませんが、色ノイズ低減+35、輝度ノイズ低減+20、レンズ補正で周辺減光補正をかけています。撮影時に長秒ノイズ低減は行っていません。なかなかの低ノイズでシャドウが粘ってくれる印象です。
レンズをプラスワン!してみた
F2.0と明るくてコンパクト。純正単焦点レンズ
今回は明るい単焦点レンズ「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」も合わせて使用してみました。
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フジのXシリーズは、明るい単焦点レンズのラインナップが充実しているのが大きな魅力。23mmにはこのレンズとは別に解放F値が1.4のさらに明るいレンズもあるのですが、お値頃な価格でそこそこ明るいレンズが提供されているのはとても嬉しいことですね。
昇るオリオン座を解放F2.0で撮影しました。焦点距離23mm(フルサイズ換算35mm)は、星空の撮影には少し長めの焦点距離ですが、やっぱり明るいレンズは強力。うっすらですが「バーナードループ」も写っています。F3.5ではこうは撮れないことでしょう。
星空撮影に向いた明るい単焦点レンズは、サードパーティからもいろいろと発売されていますが、フジの場合は、純正のオートフォーカス対応レンズの中にもお値頃なものがいくつもあります。「XF16mmF2.8 R WR」や「XF18mmF2 R」もオススメできるレンズだと思います。
まとめ
いかがでしたか?
X-T100は操作性が独特なところもありますが、コンパクトでありながらカメラらしいフォルムと高性能なフジノンレンズ、そして豊かな色再現で「エントリモデル」であることをまったく感じさせないカメラでした。
この連載で「エントリクラス」のカメラをいろいろ使ってみて感じるのは、星空を撮るのには、実はエントリクラスのカメラの方がいいんじゃね?ということです。
連写速度や高性能なAF、防塵防滴などのタフネス性など、上位機種でしか実現できていないスペックはいろいろあるものの、お手軽に「星空を撮る」場合には、そういう性能差はほとんど影響してきません。
センサーの性能も、「高感度」「低ノイズ」という星空撮影で重要な基本的な性能においては、上位機種・下位機種間の差はどんどん小さくなってきています。
特に今回取り上げたフジのカメラの場合、天体写真で重視される「赤い星雲」がどのメーカーよりもよく写ります。それはエントリ機であっても変わりません。
あなたがフジのカメラをお持ちなら、星空を撮らない手はありません。ぜひチャレンジしてみてください。
ぜひ楽しい星空ライフをエンジョイしてくださいね!
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日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。