人工光を活かす・漆黒の空の下での撮影
今回撮影したモンゴルでは、人工の光はほぼ皆無。そんな条件では一番「暗い」被写体は星空ではなく地上の風景になります。星空が仮に適正露出になっても、地上の風景は極端な露出不足になってしまいます。
その回避策としては、第四回でお話ししたようにレタッチでシャドウを持ち上げるのですが、無理にやりすぎるとノイズが酷くなったり、カラーバランスが崩れたりして不自然になってしまいます。
そこで、臨機応変にあえて「人工の光」を活用してみました。上の画像は「赤道儀」で追尾撮影中の風景ですが、カメラの液晶モニタの光をあえて地上に向け、照明代わりにしています。
この作例はいわゆる「ライトアップ」撮影です。
撮影ではスマホ(iPhone7)に白い背景を表示させた状態にして、液晶モニタの光で前景を軽く照らして撮影しました。
星空の撮影では、星空以上に明るく風景を照らす必要はありません。人工光が少ない環境では、ほんのわずかな灯りを短時間照らすだけで十分。風景を照らすのに強力なライトは不要です。
星空撮影でのライトアップには賛否があると思います。正直、筆者は「ギラギラしたライトアップ作品はもう要らない」と声を大にしたい立場なのですが、場所をわきまえて周囲への配慮を怠らなければライトアップはアリだと思っています。
記念写真的に人物や近景を照らす用途なら、明るさや色温度を簡単に変えられるスマホやタブレットの液晶画面はけっこう活用範囲が広いものです。「星空より暗いライトアップ」の技は覚えておいて損はないと思います。ただし、周囲に他の人がいる場合は、一声掛けてから邪魔にならないように配慮しましょう。
「軽いカメラ」ではブレに注意
今回の遠征ではひとつやらかしてしまいました。ブレを量産してしまったのです。
上の画像は失敗例。強めの風にカメラが揺らされて、みっともない形に星が流れてしまいました。
この原因は三脚にありました。
今回使用した三脚は雲台抜きで1kg弱のカーボン製で、決して強度不足というわけではありません。しかし、草地の上での撮影だったことと、カメラが軽量なミラーレスカメラだったことから、柔らかい地面に脚が安定して固定できていなかったようです。「機材が軽すぎた」のです。
実は筆者の三脚には写真のような「ストーンバッグ」を常備していたので、この中に重りを入れておけば済んだ話なのですが…手頃な石が近くになかった、というのはイイワケですね。お恥ずかしい。
星空の撮影を本格的にやりたいのなら、この「ストーンバッグ」は必需品ともいえます。ヒーター用のバッテリやフィルター・レンズなどの小物入れにもなります。大いにオススメです。
もうひとつ、ブレを減らす小技に「2秒セルフタイマー」があります。
ブレを減らすにはリモコンでシャッターを切るのが基本なのですが、ケーブル型のリモコンは軽いカメラでは逆にブレの原因にもなりかねません。そこで使えるのが「2秒セルフタイマー」。この機能は各社のほとんどのカメラが持っています。
α6000の場合は、ドライブモードのセルフタイマーの設定で矢印キーを押すだけ。
10秒待たされるとさすがにイライラしますが、2秒なら撮影レスポンスもさほど悪くなりません。ぜひ活用してみてください。ただし、セルフタイマー動作中に明るいランプが点灯するカメラもあります。周囲に人が多い場合は、発光部を黒テープで目張りしておくことをオススメします。
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日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。