【番外編】天体撮影のトリセツ【第三回】

エントリ一眼・キットレンズで星空撮影:OLYMPUS E-M10 Mark IIIの巻

2019.08.28
トリセツ編集部/山口千宗
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エントリ一眼・キットレンズで星空撮影:EOS Kiss Mの巻 エントリ一眼・キットレンズで星空撮影:LUMIX DC-GF90の巻 エントリ一眼・キットレンズで星空撮影:OLYMPUS E-M10 Mark IIIの巻 エントリ一眼・キットレンズで星空撮影inモンゴル FUJIFILM X-T100の巻

ライブタイムで長秒露出

EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F5.6 ISO400 15分 牧ノ戸展望台
EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F5.6 ISO400 15分
牧ノ戸展望台 zoom

ここまででもEM-10 Mark IIIは十分に魅力的なのですが、実は「秘密兵器」が2つばかりあります。

そのひとつめが「ライブタイム(ライブバルブ)」。

上の作例は「ライブタイム」で15分間、シャッターを開けっ放しにしたもの。露出時間が長い分ISO値を下げることができ、星の色が豊富に出る撮影方法。まあここまでは普通で、どんなカメラでもできることなのですが…。

OLYMPUS E-M10 Mark III

ところが!EM-10 Mark IIIの凄いところは「今どんなふうに撮れているのか」を液晶モニタで確認できるところにあります。

上の画像は撮影中の液晶モニタを撮影したものですが、星が軌跡を引いていくさまが常時確認できるのです。

長秒露出の撮影の難しさは、どのくらい「星を流すか」を決めるところにあります。「ライブタイム」を使用すれば、背面モニタを見ながら「このへんくらいがいいかな」と判断して、好きなタイミングで露出を終了することができるのです。

もうひとつ地味に便利なのは「バルブ(B)」だけでなく「タイム(T)」が使用できるところ。バルブ(B)は「シャッターボタンを押している間、シャッターをずっと開いている」、タイム(T)は「シャッターボタンを一度押すと開いたままになり、もう一度押すと閉じる」操作モード。

タイムがあると便利なのは、リモコンが不要になることです。バルブ(B)はほとんどすべてのデジタル一眼が備えているのですが、タイム(T)が使えるカメラは、オリオンパスやニコンなどの一部製品に限られるようです。(手ぶれ軽減の意味ではリモコンの方がよりベターですが、しっかり三脚に固定し優しく操作すれば問題はありませんでした)。

ライブコンポジット

北極星とその周囲の星々。いわゆる「ぐるぐる」撮影。 車が通って立木を照らしてしまいました(泣)。 EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F3.5 ISO1600 20秒×131コマライブコンポジット 奥日田
北極星とその周囲の星々。いわゆる「ぐるぐる」撮影。
車が通って立木を照らしてしまいました(泣)。
EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F3.5 ISO1600 20秒×131コマライブコンポジット
奥日田 zoom

秘密兵器ふたつめは「ライブコンポジット」。こちらは1枚撮りではなく、設定した露出時間でひたすら露出を繰り返し、撮影した画像をカメラ内でコンポジット(比較明合成)します。

上の作例は「ライブコンポジット」で131コマ、約43分間の撮影。

ライブコンポジットは1コマ当たりの露出が短いため、どちらかといえば背景が明るい「都市星景(明るい街の夜景と星を撮る)」向け。

OLYMPUS E-M10 Mark III

ライブコンポジットも、背景モニタでリアルタイムに「現在の状態」を見ることができます。左は撮影開始8コマ目、右は81コマ目。

この作例では途中、車のヘッドライトが立木を照らしてしまいましたが、そんな場合でも画面上で確認できます。

シャッターをもう一度押すまで撮影は繰り返されるので、「こりゃだめだ」と判断すれば終了してやり直せばいいのです。

EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F3.5 ISO1600 10秒×35コマライブコンポジット 奥日田
EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F3.5 ISO1600 10秒×35コマライブコンポジット
奥日田zoom

上の画像は今年のペルセウス座流星群のときのものですが、明るい流星が2つ写りました。このうち右側の流星は、画面の外でマイナス6等ぐらいに輝きました。「これは画面外だったか…」とがっかりしたのですが、液晶画面を見ると、出だしだけですが写っていました!この臨場感。はっきりいって撮影が10倍楽しくなります!

流星群の撮影では、膨大な枚数の画像から流星を探し出すのがけっこう辛いのですが、ライブコンポジットならその場でできあがりです。露出時間をあまり長くできず、撮影コマ数が膨大になりがちな、市街地での流星の撮影にも威力を発揮することでしょう。

ライブコンポジットの設定と使い方にはちょっとクセがあります。

こちらの記事がわかりやすく参考になりました。(現場でググりました。)

■オススメの記事
デジカメWatch 星空写真が好きなら「ライブコンポジット」に注目!

デジカメWatch

レンズをプラスワン!

オリンパスのM4/3(マイクロフォーサーズ)は純正レンズのラインナップが豊富です。特にPROグレードのレンズには、星空の撮影に適した明るく優秀な製品が多いのですが、お値段的にはかなりのもの。

そこで今回はお値頃な純正レンズをご紹介しましょう。


オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0

オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0 参考価格:73,872円
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こちらはキットレンズの広角端14mmよりも広い、12mm(35mmフルサイズ換算24mm)、F2.0の「PREMIUM」グレードの単焦点レンズです。お値段は実売税込7万円弱と、まあまあお値頃です。

筆者もかつて使用していましたが、F2.0の明るさは星空の撮影では重宝します。

解放から優秀な性能ですが、明るい星を取り巻く赤紫のハロが気になる場合もあります。そんなときは1段絞ってF2.8で使用するとよいでしょう。

まとめ

コンパクトなM4/3カメラの真骨頂は機動性です。撮影地に着いてすぐに、夕焼けの空と三日月をパチリ。 EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F4.5 ISO250 1/60秒
コンパクトなM4/3カメラの真骨頂は機動性です。
撮影地に着いてすぐに、夕焼けの空と三日月をパチリ。
EM-10 Mark III 14-42mmF3.5-5.6 14mm F4.5 ISO250 1/60秒 zoom

いかがでしたか?

筆者は実はM4/3システムの発売以来のオリンパスユーザ(初代EM-5)でもあります。

しかし、これまで星空の撮影では高感度時のノイズがやや多めなこともあって、主に他社製フルサイズでの撮影が主でした。

しかし、今回使用したEM-10 Mark IIIでは、高感度時のノイズが大幅に改善されていると感じました。

しかも「ライブタイム・バルブ」や「ライブコンポジット」など、星空の撮影に使える機能が搭載されていて「これなら星空でも使ってみたい!」と思わせるに十分な魅力です。

最初の一台としても、「EM-10 Mark III」は「本格的」でありながら軽量コンパクト。ガチガチ?な方向に目覚めたとしても、気軽に持ち歩けるサイズのカメラは、たぶん末永く使えるものになるはずです。

「EM-10 Mark III」ユーザーの皆さん!これはもう星空を撮るしかないですよ!?

ぜひ楽しい星空ライフをエンジョイしてくださいね!


  • 本連載記事の紹介・補足記事をこちら にまとめています。あわせてご覧いただけると嬉しいです!

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    褒められて伸びたい方も責められて嬉しい方も大歓迎!すべてにリプライさせていただきます!


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オリンパス M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0 参考価格:73,872円
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山口千宗
【天文リフレクションズ/山口千宗】

日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。
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