【連載】天体撮影のトリセツ【第八回】

レタッチで変わる天体写真 (2/3)

2017.10.22
トリセツ編集部/山口千宗
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記録された情報を最大に引き出す

月夜のはくちょう座の天の川|
SONY α7S 24mm F2.8 15秒 ISO3200(-6EV)|
沖縄県波照間島
月夜のはくちょう座の天の川
SONY α7S 24mm F2.8 15秒 ISO3200(-6EV)
沖縄県波照間島

「ネットでたくさん「いいね」が付いている写真はなんであんなに鮮やかでキレイなの?」
「自分の写真はぜんぜんそんなふうに撮れないんだけど・・」
星空の写真をはじめると、すぐそんな壁にぶちあたります。

デジタルカメラが記録する生の画像(Raw画像、といいます)は、そのままで見るとかなり地味なものです。
メリハリがなくて、なんとなくねむたいような雰囲気で、色も鮮やかではありません。
でも、実際には様々な明暗と色の情報がしっかり記録されているのです。
それをいかに上手に引き出すかがレタッチ。

ぱっと見では冴えない画像であっても、そこであきらめてはいけません。
「明るさ」「コントラスト」「彩度」の3つを調整するだけでも、見違えるように変わります。

上の作例では、さらに「HDR」という処理をかけることで、まったく別の写真のようになりました。
ネットにあふれている星空の写真は、程度の差こそあれほとんどが何らかのレタッチ(加工)がされているのです。

オリオン座スターロード|
Canon EOS6D 24mm F2.2 20秒 ISO3200 (-7EV)|
沖縄県石垣島
オリオン座スターロード
Canon EOS6D 24mm F2.2 20秒 ISO3200 (-7EV)
沖縄県石垣島

この作例の場合、Before画像でもそこそこ写っているのですが、「星の色」が若干不満。
細かくはいろいろ技を使っていますが、方針としては星の色をもっと鮮やかにするというレタッチをしています。
「スターロード(海に反射した道のような星の反射)」はちょっとやりすぎくらいに彩度を上げています。


都会でも撮れる星空・比較明合成

昇る冬の大三角|
EOS5D 17mmF5.6 15秒 ISO400(-2EV)|
福岡市内
昇る冬の大三角
EOS5D 17mmF5.6 15秒 ISO400(-2EV)
福岡市内

レタッチではありませんが、デジタルならではの星空の撮り方の例。
左のBefore画像は、都会のど真ん中からオリオン座を撮ったもの。星はシミくらいにほんの少ししか写っていません。
でも、この条件で15分間撮り続けた60枚の画像を「比較明」という方法で合成したのが右の画像。

「比較明」というのは、複数のコマの画像から「一番明るい」データだけを取り出して合成する方法で、風景はほとんどそのままなのに対して「シミ」のようだった星はつながった1本の軌跡になって、右のAfter画像のようにはっきりと目立つようになります。

光にあふれた都会の風景の空に星の軌跡が描かれた写真は「都市星景」と呼ばれています。
独特の味わいがあり、今後熱心なファンが増えそうな分野です。

より広い星空が撮影できるパノラマ合成

西に傾きはじめた夏の銀河。Before画像はレタッチ済み画像。|
EOS6D 24mm F2.2 30秒 ISO3200(-7.67EV)|
沖縄県石垣島
西に傾きはじめた夏の銀河。Before画像はレタッチ済み画像。
EOS6D 24mm F2.2 30秒 ISO3200(-7.67EV)
沖縄県石垣島

もうひとつ、デジタルならではの星空の撮り方。
上の作例は、24mmの広角レンズでカメラを上下にずらして3枚撮影し、専用のソフトウェアICEでつなぎ合わせたもの。
だいたい16mmの広角レンズに相当する範囲が写っています。

このような手法をパノラマ合成と呼ぶのですが、レタッチの基本さえマスターしていれば実は意外とカンタン。
基本的には何もしなくても、ソフトウェアが勝手につないでくれるのです。

パノラマ合成はより広い範囲が写せる以外にも、超広角レンズと比較して画質が良くなるメリットがあり、こちらも今後ファンが増えそうな分野です。

目に見えないものを撮る、深宇宙の撮影
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山口千宗
【天文リフレクションズ/山口千宗】

日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。
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