月はとても明るい
では本題に戻ります。
月そのものはとても明るい被写体。たとえば、満月の表面は快晴の昼間(14EV)と同じくらいの明るさです。
上の写真は、夜の10時ごろに、街中の歩道橋から月齢3.7の月を撮ったもの。
左が月そのものに露出を合わせた場合。月は小さく写っているだけで、夜景は完全な露出アンダー。これではつまりません。
右は背景の風景に露出を合わせた場合。逆に、月は完全に露出オーバーでツブレてしまいました。
低空の細い月でさえ、夜の風景と比べるとずっと明るいのです。
では、月も風景もキレイに撮るにはどうすればいいのでしょうか。
画像処理ソフトで加工する方法もなくはないのですが、もっとシンプルな方法があります。
月と風景の明るさの差が少なくなるときを狙うのです。
月ある風景の4つのシャッターチャンス
では、どんなときに月と風景の明るさの差が少なくなるのでしょうか。
1、昼間の月
月の表面は快晴の昼間と同じくらいの明るさ」ですから、逆に昼間に月を撮れば自然と両方が適正露出になります。
昼間の月は一番撮りやすい天体。撮影するのに特別な技術や機材は何もいりません。
カメラを全自動にしてシャッターを押すだけ。三脚も不要。これでも立派な天体写真です。
青空にぽっかり浮かんだ月はなんとも神秘的。
昼間の月を撮る場合、あまり細いと青空に埋もれてしまってはっきり写すことができません。半月ごろより太い時期(月齢6〜23くらい)がオススメです。
また、「青空と月だけ」ではちょっと写真としての面白さに欠けてしまいます。雲や建物、木立などの地上風景とうまくミックスさせるのがコツ。
2、夕焼け・朝焼けの細い月
その次に撮りやすいのが、夕焼け・朝焼けの中の細い月。
三日月は昼間の青空よりも露出4段分以上暗いため、日が暮れて空が徐々に暗くなるタイミングを狙うことで、月と風景の両方を適正露出で撮ることができます。しかも、赤く焼けた低空から濃紺の青空までのグラデーションがフォトジェニック。
あまり月が細いと太陽に近すぎて見ることができず、太いと月が空よりも明るくなりすぎてツブレてしまいます。
月齢でいうと2.0〜5.0(夕方の場合)、24.0〜28.0(明け方の場合)くらいの間がオススメです。
3、薄暮の空の低い満月
日の入り・日の出の時に太陽が昼間ほど眩しくないのは、低空にあるほど空気に光が吸収されて暗く見えるから。
月もこれと同じで、低くなるほど暗くなってゆきます。
このため、月が沈んでゆく・登っていくタイミングを狙うことで、月と風景の両方を適正露出で撮ることができます。
一番のチャンスは日の入り後の満月と日の出前の満月。
空にはまだ明るさが残り、低空の月は赤く染まって濃紺の空との対比がフォトジェニック。
ただし、満月は細い月よりも露出4段以上明るいので、かなり低空に近づいた状態でないと月が露出オーバーになってしまいます。
上の作例は月が沈む約10分ほど前。低空の月は意外と速く沈んでしまうもの。短い間のチャンスを確実にとらえなくてはなりません。
そのため、細い月よりも難易度は高くなります。
4、雲間の月
雲の間に月が出たり隠れたりするときも、実は隠れたチャンス。
雲にさえぎられて月は暗く、空は月に照らされた雲で明るくなり、月と空の輝度差が小さくなるため。
この撮影は運次第。カメラをいつもスタンバイして、一期一会のチャンスを逃さずに撮るスタイルがオススメ。
流れる月に見え隠れする、刻一刻と変わる月のある風景は、意外性に満ちた被写体なのです。
日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト/その編集長。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。