富士フイルムはその名の通り、写真用フィルムのために創業した会社でしたが、実は、世界最初の「メモリカードに写真を記録するデジタルカメラ」を開発したメーカーでもあります。
そんな富士フイルムのデジタル一眼はすべてミラーレス。APS-Cサイズセンサーを搭載したXシリーズと、中判センサー(35mmフルサイズよりひとまわり大きい)を搭載したGFXシリーズの2本立てと、他社とはひと味違う富士フイルムならではの構成となっています。
富士フイルムの歴史
富士フイルムといえば……日本の写真文化を作った会社といっても過言ではありません、いや過言かな、たぶん過言じゃない。フィルムカメラの時代、日本で最もポピュラーなフィルム会社であり、日本人の多くは富士フイルムが作った写真用フィルムで撮り、フジカラープリントでプリントした写真を見て育ってきたのですから。
そんな富士フイルムの創立は昭和9年(1934)。その前に映画・写真用フィルムの国産化を目指した会社があり、そこを母体として生まれました(当時は「富士写真フイルム」)。
その後、レンズやカメラの製造も行い、カメラ・フィルム・現像機器・印画紙へのプリントと写真にまつわるすべてをフォローするに至りました。
カメラとしてはコンパクトカメラが中心でしたが、中判カメラや一眼レフ(フジカ STやAXなど)も販売していました。
デジタルカメラがほとんどとなった今でも、レンズ付フィルムの「写ルンですシリーズ」や「チェキ」といったアナログカメラは人気を保ってます。
このように、フィルム時代に躍進した富士フイルムですが、実は世界最初のデジタルカメラを開発したのも富士フイルムなのです。
厳密に言えば、デジタルカメラを発明したのは米イーストマン・コダック社ですが、それは写真をデジタルで記録するのに成功した、というもの。その後「電子スチルカメラ」と呼ばれる「CCDイメージセンサーが捉えた信号を記録する」カメラが誕生しましたが、あれは画像を「アナログデータとして磁気ディスクに記録」するもので、デジタルカメラではありませんでした。
今のデジタルカメラと同じく、メモリカードにデジタル画像を記録するカメラの元祖は富士フイルムが1988年に発表した「FUJIX DS-1P」なのです。
これは試作機で終わりましたが、翌1989年には「FUJIX DS-X」が発売されました。
出典:富士フイルム株式会社
フィルム全盛期にすでにデジタルカメラを開発していたわけですからえらいもんです。
そして、1995年のカシオのQV-10で始まった一般向けの普及型デジタルカメラの波にもいち早く乗り、1995年にはDS-220、1996年には廉価なDS-7/8など普及型カメラで、カシオやオリンパスとともに初期のコンパクトデジカメを牽引しました。
で、デジタル一眼レフはどうか、というと、なんと1995年に第一弾を出しています。
それがDS-505。これはニコンとの共同開発で、レンズはニコンのFマウント。ボディには両方のロゴが入っていました。
2000年には、独自のデジタル一眼レフ「FinePix S1 Pro」を発売。これもニコンのボディを流用し、レンズもニコンのFマウントを採用していました。富士フイルムならではの発色の良さもあって根強いファンがいたのですが、S5 Proで終了します。
そして2012年、全く新しいフォーマットの全く新しいテイストのミラーレスデジタル一眼が登場します。「X-Pro1」です。
X-Pro1は同社のXシリーズ第一弾でマウントもXマウント。センサーサイズはAPS-Cですが、一番の特徴は「ハイブリッドファインダー」。光学ファインダーとEVFを切り替えて使えるという画期的でマニアックなもの。
さらに、撮影モードダイヤルはなく、シャッタースピードとISO感度にそれぞれ専用ダイヤルが割り当てられています。レンズについている絞りリングも合わせて「ダイヤルをカチカチ回しながら自分でセッティングして撮る」という趣味道楽性が強いハイエンド機でしたが、これが評判となり、その後、Xシリーズとして展開。レンズも増えました。
そのまま富士フイルムはAPS-Cサイズミラーレス一眼でいくのかと思いきや、2017年、富士フイルムは新しいシリーズを発表しました。35mmフルサイズより一回り(約1.7倍)大きな中判サイズセンサーを搭載したGFX 50Sです。
比べて見ると、どれだけセンサーが大きいかわかりますよね。
そして、APS-CサイズのXマウントと、中判サイズのGマウントの2本立てとなったわけです。
マウント別に富士フイルムのラインナップを整理
富士フイルムのXシリーズは大きく分けて、2つのスタイルがあります。
ひとつは「レンジファインダー風」と呼ばれる「四角い」ヤツ。X-Aシリーズ以外はファインダー(EVF)を内蔵していますが上面がフラットです。もうひとつは「一眼レフ風」と呼ばれる「凸型」なヤツ。
それぞれ上から下まで揃ってますから、まず「形」から入ってもよいでしょう。そう思い、表もそのように分けてみました。
エントリーモデルは操作性も非常に一般的なものですが、ミドルクラス以上は、シャッタースピードダイヤルを持っているなど、Xシリーズならではの伝統的なカメラのスタイルとなっています。
写真好きならミドルクラス以上を狙いたいところです。
老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。