今やデジタル一眼の雄となったソニーですが、多くの人がご存じのように、フィルムカメラ経験はありません。デジタルになってカメラを手がけるようになったメーカーです。
その代表がαシリーズですが、実は、もともとソニーの製品ではなかったのです。
αの歴史
αシリーズ最初のカメラは「α-7000」でした。
なんと1985年。開発したのはミノルタ。ミノルタは1929年にカメラを、1958年に一眼レフカメラを発売したカメラ界の老舗ブランド。
そのミノルタが1985年にAF機構を取り入れた「α-7000」を開発し、「αショック」という言葉が生まれたほどヒットしました。本格的なAF時代のはじまりです。
2000年にはさらに「α-7」が誕生しました。
ちなみに、ソニーの製品は「α7」、ミノルタの製品は「α-7」です。微妙に表記が違います。
さてその後、デジタルカメラの時代になり、ミノルタも頑張ったもののなかなかシェアをとれずに苦戦。2003年には同じく老舗の光学機器・フィルムメーカーだったコニカに統合され、コニカミノルタとなりました。
その翌年、αシリーズ最初のデジタル一眼レフが誕生します。「α-7 DIGITAL」です。これはボディ内手ブレ補正を搭載した画期的な製品でしたが、他社より少し遅れたこともあって時代の波にはなかなか乗れず、2006年にはカメラ事業を手放すことになってしまいます。
コニカミノルタが手放した一眼レフ部門を、開発陣も含めてまるごと引き取ったのがソニーでした。
ソニーはコンパクトデジカメのCyber-shotを展開していたものの、レンズ交換式カメラは持っていませんでした。今後デジタルカメラメーカーとして伸びていくためには、レンズ交換式カメラは欠かせません。しかし、一眼レフを展開するには豊富な交換レンズやノウハウが必要で、ニコンもキヤノンもミノルタもフィルムカメラ時代のレンズ資産やユーザーを多く抱えていましたが、ソニーにはそれがまったくなかったのです。そこをミノルタの一眼レフ部門を丸ごと引き受けることで、一気に獲得したのでした。
ミノルタではじまったαシリーズはソニーの元で大復活を遂げるわけです。そして2006年にはソニーブランド初のデジタル一眼レフ「α100」が登場。
ミノルタの技術や開発陣、レンズを得たソニーはどんどんαシリーズを展開し、本格的にデジタル一眼メーカーとして歩み始めます。
2008年にはフルサイズデジタル一眼レフα900を発売。これで上から下までラインナップが揃いました。
2010年からは「トランスルーセントミラー」方式を採用。ファインダーを光学ファインダーからEVFにし(つまり、構造はミラーレス機と同じ)、ミラーボックスには透過型ミラー(トランスルーセントミラー)を搭載。光の一部をAFセンサーに当てることで、AFは一眼レフと同じ、でも撮影動作はミラーレス一眼と同じというユニークな一眼レフとなりました。
さらに同年に、ミラーレス一眼の「αNEXシリーズ」も開発。
ソニーも本格的に一眼レフとミラーレス一眼の両方を進めていくことになりました。NEXはミラーレス一眼ならではの超小型カメラで、ボディよりレンズの方が大きいと言われたほどでした。
この頃からソニーらしさが随所に現れたカメラとなっていきます。
2013年にはNEXの名がなくなり、一眼レフもミラーレス一眼もどちらも「αXXX」という名前に統一。
そしてフルサイズミラーレス一眼の「α7」が登場します。
NEXシリーズはAPS-Cサイズセンサーで登場し、そのEマウントもAPS-Cサイズセンサーに最適化された大きさだと思われてましたが、なんと、α7はそこにフルサイズセンサーを入れてきたのです。皆それには驚きました。
しかもα7IIからはそのセンサーを動かしてボディ内手ブレ補正を実現したのですから、2度ビックリです。
α7シリーズが大ヒットしてからは、一眼レフのαシリーズは徐々にラインナップを減らし、今は2モデルだけとなりました。。
今後はミラーレス一眼のみに収束し、ソニーらしさやソニーの強みを存分に活かしたカメラとなっていくでしょう。
ミノルタが開発したフィルム一眼レフ「α-7」がソニーのミラーレス一眼の「α7」となったと思うと、往年のミノルタファンはちょっと複雑な思いかもしれません。
マウント別にソニーのラインナップを整理
ミノルタのαシリーズを受け継いだ一眼レフのマウントは「Aマウント」といいます。元々はαマウントといっていました。
新しくミラーレス一眼用に開発されたマウントは「Eマウント」。
では表をどうぞ。
なお、Eマウントの場合、フルサイズ対応のレンズは型番が「FE」で、APS-C対応のレンズは型番が「E」ではじまるのでそれで区別します。
老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。