今や一眼レフやミラーレス一眼、コンデジに到るまでほぼすべてのスチルカメラに動画撮影機能が備わっている。もっと言えば、動画撮影機能に特化した機種まで発売されている。
もはや一眼レフやミラーレス一眼は写真を撮るためだけのモノではない。美しい動画を撮影できるカメラとしても注目されているのだ。
そんな中、満を持して登場したのが「富士フイルム X-H1」だ。これまでフラッグシップとして君臨していた「X-T2」の上位機種という位置付けだが、これまでのXシリーズとは異なる新たな挑戦が随所に見られる。
そんな新たな挑戦の中でも、本記事では動画性能にフォーカスして長期(2ヶ月)利用したので、感想と共にご紹介したい。
ちなみに「X-H1」の動画性能についてメーカーインタビューをおこなった。是非コチラも参考にしていただきたい。
【FUJIFILM X-H1】動画性能メーカーインタビュー【前編】
動画カメラとしてオススメしたい理由
「X-T2」でも動画の撮影はできた。しかし「X-H1」はさらに動画撮影に適したカメラへと進化を遂げている。「X-H1」を動画カメラとしてオススメしたい大きな理由が以下。
・最大5.5段の補正効果を実現したボディ内5軸手ブレ補正
・フィルムシュミレーション「ETERNA(エテルナ)」の搭載
・DCI4K (4096×2160)に対応し、200Mbpsの高ビットレートでの撮影が可能
・F-Logの内部記録(X-T2でも可能となった)
・フルHDながら120pのハイスピード撮影に対応
・各種設定変更を背面モニターのタッチパネル操作できるサイレント操作
外観・操作性
他メーカーのカメラに慣れている方がこのカメラを手に取った時、「アレ?」と思うかもしれない。いわゆる「モードダイヤル」がないのだ。「絞り優先モード」「シャッタースピード優先モード」等を切り替えられるあのダイヤル。
富士フイルムのカメラの場合は「絞り」「シャッタースピード」「ISO」にそれぞれ「AUTO」があり、これらを組み合わせることで使用したいモードに設定する。
例えば「絞り優先」なら「シャッタースピード」と「ISO」を「AUTO」。「シャッタースピード優先」なら「絞り」と「ISO」を「AUTO」にするといった具合だ。最初は少し戸惑うが、慣れるとコレはコレで心地よく使うことができる。
ボディは「X-T2」と比べると「手ブレ補正」が備わったことにより、一回り大きくなった。しかし、動画を撮影する上ではグリップがしやすく、むしろ持ちやすくなったと感じる。また、右肩の露出補正ダイヤルが廃止され、各種情報を表示するパネルが追加された。
私の場合、動画撮影はマニュアルで撮ることが多いため、露出補正ダイヤルは必要ない。むしろ露出や各種情報が一目で見れるこの表示パネルは非常に役に立つ。ちなみにパネル横の小さなボタンを押すことでバックライトが点灯し、夜間でもしっかりと確認することが可能だ。
また、「動画サイレント操作」をONにすることで、背面液晶のタッチパネルで絞りやシャッタースピード等を操作できる。カメラの操作音を拾いたくない場合に役立つ機能だ。
X-H1の動画性能検証
前述した通り「X-H1」は動画撮影を意識した作りとなっている。ここではそれら動画性能を検証しながら見ていこう。
・手ブレ補正
非常に優秀なボディ内5軸手ブレ補正となっている。換算213mmという望遠レンズで撮影しても被写体が止まって見える。しかしパンやチルト、被写体を回り込んで撮影するなどのシーンでは思い通りの結果とはならなかった。アルゴリズムの改善に期待したいところだ。
・4K撮影時のクロップと録画時間
4K 4:2:0 8bit 200Mbpsという高画質で記録ができるが、4K撮影時には1.17倍クロップされ画角がやや狭くなる。また4K動画の録画時間は15分に制限される。
・オートフォーカス
オートフォーカスは「AF-Cカスタム設定」で「被写体保持特性」と「AF速度」を各10段階で設定できる。「AF速度」の数値を変更することで素早くピントを合わせたり、滑らかにピントを合わせたりすることが可能だ。
ただし、レンズによってスピードが変わるので注意したい。また、画面占有率の小さな被写体に対してやや迷う傾向にあるようだ。
・高感度耐性
暗い場所でISO感度あげて撮影することでノイズが発生する。以下の動画はISO感度を400〜25600に設定し、ノイズの乗り具合を検証した動画だ。ISO6400あたりまではディテールが豊富でノイズも少なく感じる。特に4K撮影時は静止画と同じ処理をしているためノイズがうまく低減されている。
・ハイスピード撮影
フルHDで連続最大6分までのハイスピード撮影が可能。全画素読み出しではないようだが120p/100pによる印象的なスロー動画は魅力だ。以下の動画は120p/200Mbpsの4倍スロー。
・フィルムシュミレーション「ETERNA(エテルナ)」
富士フイルムには、これまでにも動画に向いているフィルムシュミレーションは多く存在した。ドキュメンタリータッチの画が撮れる「クラッシッククローム」、彩度が高く鮮やかで印象的な画の「Velvia」。階調が柔らかく白飛び黒つぶれに強い「PRO Neg.Std」等だ。
今回新しく入った「ETERNA(エテルナ)」は元々映画の撮影と上映用に使われていたフィルムで、この特性をうまく落とし込んでいる。ビデオライクな画ではなく映画ライクな高品位な画となっており、ダイナミックレンジが広く柔らかな階調となっており、「PRO Neg.Std」よりもさらに白飛び黒つぶれに強い。
この「ETERNA(エテルナ)」を使えるだけでも「X-H1」を使用する価値は十分にある。
上記映像は「X-H1」にXF35mm F1.4にNDフィルターを付けて手持ちで撮影した。編集時には露出のみ調整をしている。露出アンダーな部分はシャドウを持ち上げたがディテールが損なわれることはなく、8bitとは思えない自然な仕上がりとなっている。逆に露出オーバー気味で撮ってしまい、白飛びしてしまったカットは使えなかった。撮影時の露出は適正露出かややアンダー気味で撮るといいかもしれない。
・F-Log撮影
黒つぶれや白飛びを起こしがちな被写体でもF-Logで撮影(最低ISO感度800)すると、広い「色域」「ダイナミックレンジ」「階調」の映像情報を記録することができ、階調が失われることなく、イメージに近い映像を編集により作り出すことが可能となる。
F-Log撮影した映像情報をカラーグレーディングすることで、シーンに合わせた自由度の高い映像表現が可能となる。ここにLog撮影の魅力がある。以下の動画はF-Log撮影した映像に、公開されているF-Log用LUT「ETERNA」を当てた。
ちなみにこの動画では「XF10-24mm F4」と3軸スタビライザー(ジンバル)「POLOTFLY H-2-45」を使って撮影した。手ブレ補正をONにするとスタビライザーの微振動をうまく抑制してくれ、相性も良い。 「POLOTFLY H-2-45」は現在新モデル「Adventurer」が発売中だ。コチラも要チェック。
※本文内の価格情報は2018年2月13日時点でのpilotfly.shopの価格です。更に夜の街をF-Log撮影した動画も作例として紹介しておこう。こちらも「XF10-24mm F4」と3軸スタビライザー(ジンバル)「POLOTFLY H-2-45」を使って撮影した。レンズがF4とやや暗いこともありISOは6400~12800あたりとなっている。ISO12800を使ったカットではノイズが気になるかもしれない。LUTは「ETERNA」を使わずカラーグレーディングした映像となっている。
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トリセツ編集部 編集長。トリセツの広報としてプロモーション業務とメディア運営を手がける。また各方面でプロモーション、デザイン等の業務に携わっている。