最初に買ったデジタル一眼レフがニコンのD1だった荻窪圭です。1999年のことです。
あれから21年。レンズ交換式カメラ市場の主役はミラーレス一眼へとシフトし、一眼レフはどうなるのか、と思う人もいるでしょうが、ニコンから出ました。最新の主力デジタル一眼レフ。
それがD780。
前モデルのD750が2014年でしたから。ちょっと待たせすぎという感があるくらい。
待たせただけのことはあるのか、どんなカメラなのか見ていきましょう。
一眼レフの高い完成度にミラーレス一眼の良さが合体!?
D780は汎用性が高いミドルクラスのフルサイズ一眼レフです。
フラッグシップ機のDヒトケタ系や高画素ハイエンド機のD8xx系は価格的にも性能的にも使いこなし的にもちょっと敷居が高い感があったのですが、D780はその逆。高性能でありながらちょっと小ぶりで手を出しやすい価格。もともと前モデルのD750は完成度が非常に高く、一眼レフとしてはまったく問題がない製品でした。少なくとも価格やサイズを考えれば、非常に優れたカメラだったのです。
でも2つ欠点がありました。ひとつは年月。さすがに6年もたてばカメラの技術も発達し、イメージセンサーも進化しますからね。それは否めません。
もうひとつはライブビュー。
ニコンの一眼レフはファインダーではなく背面モニタを使って撮影するとき(いわゆるライブビュー)、AF速度やレスポンスがイマイチだったのです。でも今の時代、一眼レフでもライブビューで撮るシーンが増えていますから、それではいけない。
D780はこの2つを克服しての登場となったのです。
特にライブビュー。
D780は(おそらくは)ミラーレス一眼のZ 6と同じ像面位相差AF対応の約2450万画素のイメージセンサーを搭載し、ライブビュー時のAFを格段に速くし、瞳AFにも対応しました。ある意味、Z 6の技術を使った一眼レフといっていいかもです。価格的にも似てますし。
もともと一眼レフとしての完成度は抜群でしたから、ライブビュー時の使用感を増したことでぐっと実用性が上がりました。
光学ファインダーはもちろん視野率100%で倍率は0.7倍。D850が約0.75倍ですからそれには及びませんが、見やすいファインダーです。
AF測距点は51点。
ライブビュー時はタッチAFが使えることと、顔検出や瞳AFが使えること、さらにマニュアルフォーカス時に拡大表示できるのがメリット。三脚を使ってMFで撮るときはライブビュー一択です。
また、ヒストグラムを表示しながら露出をきちんと合わせて撮りたい、ホワイトバランスやピクチャーモードの効果を見ながら撮りたいときはライブビュー。
モニタをチルトさせてローアングルやハイアングル撮影したいときもライブビュー。
逆に、動く被写体をきっちり追いたいとき、撮影に集中したいときは光学ファインダーですね。
正直、光学ファインダーを覗いて一眼レフとして使う方が、撮ってて気持ちいいのは確かです。
この三角頭の中にはファインダーが入っているわけです。
ファインダーを除いて撮るとしっくりするカメラです。
そのファインダーはミドルレンジクラスとしては大きくて見やすくて明るいのがよい点。
後ろからみるとこんな感じ。iAUTOモード時はちょっとカラフルで初心者向きの画面。
で、すっかりミラーレス一眼にシフトした荻窪圭が久しぶりに一眼レフを使ってみてどうだったか。
実は気がついたらほとんどのカットをファインダーを覗いて撮ってました。
せっかくライブビューを強化したのに。
ちなみに、いちはやくデュアルピクセルCMOSセンサーを搭載してライブビュー撮影を快適にしていたキヤノンのEOS 90DやEOS Kiss X10を使ったときはどうだったかというと、EOS 90Dクラスを使ったときは光学ファインダーとライブビューが半々くらい、EOS Kissクラスを使ったときはライブビューで撮ったのが7割くらいという感じ。
自分でも面白いなと思います。これはキヤノンかニコンかというよりは、一眼レフとしてのランクの差でしょう。
エントリー機は物理部分にあまりコストをかけられないので、ファインダーの質や操作性が上位機に比べると落ちるんですよ。特にエントリー機はボタンやダイヤルを減らした分画面を見ながらあれこれ設定する設計になってますから、ファインダーを見るよりは画面を見た方が撮りやすいんです。
光学ファインダーの質と操作感はコストに直結しますからね。エントリー機になるとどうしてもその辺が落ちます。
その点、D780クラスになるとファインダーを覗いて撮った方が格段に快適なのです。そもそもファインダーを覗いて撮るようにボディがデザインされてますから構えが安定しますし、操作系もファインダーを覗いたまま操作するデザインになってますし、一眼レフですからライブビューで気軽に撮るにはちょっと重くてかさばるんですよね。
なので、D780は「光学ファインダーを主、ライブビューを従」として使う人におすすめです。
ファインダーを覗いて撮ったのがこちら。
ライブビューで撮ったのがこちら。
同じカメラとレンズでもちょっと違いますよね。ファインダーを覗くと一眼レフっぽい写真になります……何言ってんだかという感じですが、撮る人の視線がそのまま表れるって感じ。
使ったのは35mm F1.4という単焦点レンズ。ボケ方がきれいで標準レンズ的に使うには(ちょっと大きめですが)おすすめです。
AF-S NIKKOR 35mm f/1.4Gを装着
この自然な色合いや曇天ならではの柔らかい感じはさすがニコンです。
続いて、50mm F1.8を付けて街のスナップを撮ってみましょう。このレンズは安価でコンパクトなので気軽にスナップを撮るのに重宝します。絞り開放で撮るとディテールに甘さが見えますが、そこはしょうがないですね。
撮影時はファインダーを覗いたままフォーカスを合わせ、光の感じを見て露出補正をかけます。ホワイトバランスは屋外で撮るときは「自然光オート」にするのがおすすめ。
一眼レフのよいところは光学ファインダーで撮れることなのですが、それは欠点でもあるわけです。慣れないと露出やホワイトバランスの予測ができません。撮り慣れてる人はぱっと光の感じを見て、ファインダーを覗いたままさっとダイヤルを回して設定を変えますが、使い慣れてない人はどうしてもカメラ任せになるか1枚ずつモニタで確認してしまいます。
逆にライブビュー画面上である程度露出や色を確認できますから、慣れてなくても撮りやすいわけです。
というわけでライブビューらしい作例を。レンズは24-120mm F4をつけています。
ライブビュー時はファインダーを覗いているときより手ブレしやすいので、手ブレ補正レンズを使うのがおすすめ。
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老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。