ミラーレス一眼にオールドレンズを装着して楽しむという趣味がポピュラーになった(いや、なってるのかは知らんけど)今日この頃。
ミラーレス一眼ならではの趣味ですよね。ミラーレス一眼は一眼レフと違って、どんなレンズをつけても絞り優先AEが使えるし、拡大表示やピーキング表示などマニュアルフォーカスを手伝ってくれる機能があるのでピントを追い込みやすい、マウントアダプターを介すればたいていのレンズは装着できるというメリットがあるからです。わたしもひょんなことからカール・ツアイス・イエナの1950年代に作られたレンズを持っていますが、写りが個性的でたまりません。
でも、マニュアルレンズのメリットを享受できるのは古いレンズだけではありません。実は、ミラーレス一眼ユーザーに向けた昔ながらのフルマニュアル撮影を楽しめる、シンプルなレンズがいくつも発売されているのです。
そのひとつがKamlan。今の時代にわざわざフルマニュアルなレンズを使うのはどうなのか。味わってみました。
50mm F1.1の大口径完全マニュアルレンズに挑戦
2019年初頭に一部で話題になった、50mmでF1.1という超明るいのに約25,000円というレンズがありました。作っているのはKamlan。中国の深センの会社です。
それがこれ。
ちょっと重厚でカッコいいわけですが、イマドキのレンズと違うのは、絞りもフォーカスもマニュアル専用という潔いレンズである点。
それどころかレンズとカメラ本体で信号をやりとりする電子接点はまったくありません。
絞り値がどうなっているかも直接レンズを見ないとわからないし、絞りリングにも「クリック」はないのでいちいちレンズを目で見ないとわかりません。
その代わり、安くてシンプル。
普通、F1.1とか1.2という大口径レンズになると10万円オーバーは当たり前で前玉(一番先っちょについてるレンズ)も大きくて重いのが普通ですが、Kamlanのレンズは普通サイズ。普通というのも変ですが、この価格と手軽さでF1.1ですからたまりません。デザインも「鉄製」って感じの重厚感がよいですし。
APS-Cサイズセンサーのカメラにつけると35mm判換算で75mm相当のいい感じのポートレートレンズとして使えます。
絞り開放で撮るとほんとにピントが浅いので、左目に合わせたら右目はボケ、背景なんかもうぼけちゃってナニがなんだかという感じ。ここまでボケてくれると楽しいですな。
そんな超シンプルな完全マニュアルレンズですが、ミラーレス一眼用なら、絞り優先AEレンズとしても使えますから露出に関しては心配ありません。
フォーカスも拡大表示を使えば問題なく合わせられます。
今回使ったX-T2だとこんな感じ。
X-T2など富士フイルムのカメラは「2画面」表示にして、片方をマニュアルフォーカス用に拡大表示する機能があります。構図をチェックしながらフォーカスを合わせるというものですね。
さらに、中央部を拡大して「デジタルスプリットイメージ」を使うという手もあります。わたしはこれが使いやすかったかな。
実は一眼レフよりミラーレス一眼の方がマニュアルフォーカスに向いているのですね。
で、撮ってみました。比較的コンパクトなのにF1.1という大口径で低価格ですから、写りも原始的なオールドレンズと変わらないかなと思いきや、なかなかよく写っています。もうちょっと収差が強く出るかな、不自然なボケになるかなと思ったのですがなかなかいい具合です。
この手前の葉っぱを前ボケにして撮った夕日なんて、実によい色が出ています。
あえて絞り開放で撮っていますが、ボケ感もなかなか。
こちらはモノクロですが、駅に向かって駆けていく人がいたので、それをアクセントにしてノーファインダーで撮りました。絞りをF8に、フォーカスを5mくらいにして距離は感覚でシャッターを切っています。マニュアルフォーカスならではの速写です。
画質を上げるにはF4くらいまで絞った方が、ディテールもシャープに出ますし四隅が暗くなることもないのですが、描写力や発色を求めるなら、イマドキのAFレンズを使えばいいのであって、せっかくのF1.1ですから不便さも一緒に楽しみたいところです。
ホワイトバランスは太陽光に固定し、時にはモノクロモードを使うのもよいかと思います。
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老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。