【連載】カメラのトリセツ〜基礎から理解するカメラ講座〜【第6回】

一眼レフかミラーレスか、それが問題だ (2/2)

2018.10.28
トリセツ編集部/荻窪圭
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7:レンズが豊富なのはどっち?

レンズ資産は単純に「歴史が長くてユーザーが多い」方が有利です。まあフィルムカメラ時代のレンズはAFが遅いとかありますが、使えるレンズの数では圧倒的ですし、ニコンやキヤノンの2大メーカーはサードパーティのものを含めると、膨大な種類のレンズを持っています。これは長い歴史とユーザー数の賜物であり、一眼レフの圧勝です。

一眼レフレンズ
cp+のニコンブースにて。レンズやボディの現行モデルが超広角から超望遠までずらり。

8:手ブレしにくいのはどっち?

実は、ミラーレス一眼の方が手ブレはしにくいといえます。一眼レフは撮影するときにミラーボックス内のミラーが上がったり下がったりするので、そのときのちょっとした振動が手ブレ(というかカメラの微細なブレ)を誘発するのです。

ハイエンド一眼レフはコストをかけて、ミラーボックス内の振動をうまく吸収して手ブレへの影響を低減していますが、ミドルクラス以下でしたら、ミラーレス一眼の方が手ブレしづらいといっていいかと思います。

ミラーレス一眼の場合「電子シャッター」を使えばもっと手ブレしづらくなります。

とはいえ手ブレというのはどんなカメラでも常に起きているわけで(何しろ人間の手はブレるものですから)、それを防ぐために「手ブレ補正機構」を備えています。

最近はレンズ内とボディ内の両方に手ブレ補正機構を持ち、両者を連動させることでより補正を強くするカメラもあります。

現在もっとも手ブレ補正が強力な組み合わせ(オリンパス E-M1 Mark II + 12-100mm F4 Pro)で夜景を撮影。手持ちで4秒。
現在もっとも手ブレ補正が強力な組み合わせ(オリンパス E-M1 Mark II + 12-100mm F4 Pro)で夜景を撮影。手持ちで4秒。 zoom

9:バッテリーの持ちがよいのはどっち?

これは条件付きで、一眼レフの圧勝です。

わかりやすいところでニコンのD850(一眼レフ)とZ 7(ミラーレス一眼)で比べてみましょう。

どちらもほぼ同じバッテリーを使ってますが、D850は約1840枚、Z 7は約330枚です。約5倍の差!

なぜこんなに差が出るのでしょう。ほんとにそんなに違うのでしょうか。

ミラーレス一眼はモニタ(EVFを含む)を見ながら撮影しますから、イメージセンサーや背面モニタはより長時間働き続けるため、電力消費が大きいのは確かです。

逆にいえば一眼レフも背面モニタを使ったライブビュー撮影をすれば、ミラーレス一眼のように電力を消費します。ただ実際の持ちはもうちょっといいかなという感じです。

たとえば、オリンパスのE-M1 Mark IIは公称ですと「約440枚」ですが、実際にはこんな感じ。

ハイエンドカメラではバッテリーの状態をチェックする機能
ハイエンドカメラではバッテリーの状態をチェックする機能を持っているものがあります。

33%で300枚撮れていますから、バッテリーが切れるまでに900枚ほど撮れるでしょう(特に省電力のための設定はしていません)。公称の2倍くらい撮れる感じですね。

つまりカタログの数値はあくまで定められた条件でのもの、実際の運用では撮り方やモニタなど電力消費が大きな部品の稼働時間で大きく変わります。

経験的には、両者の差は2〜3倍という感じです。


10:ファインダーが見やすいのはどっち?

一眼レフとミラーレス一眼の大きな違いはファインダー。

一眼レフは「光学ファインダー」を備えています。背面モニタを使って撮ることもできますから、「光学ファインダー」かモニタを使った「ライブビュー」のどちらかを使えます。

光学ファインダーはレンズに入った光をそのまま見ることができるので非常に自然な見映えですが、実際に撮影したときのセッティング(明るさや色など)は反映されません。慣れないと思ったより暗く写っていた、なんてこともあります。

光学ファインダーの例
光学ファインダーの例。カメラのファインダーにiPhoneをくっつけて撮っています。製品によって見える大きさや明るさに違いがあります。

ミラーレス一眼はEVF(電子式ビューファインダーの略)を採用しています。小さくて高精細なモニタを内蔵し、それをレンズで大きくして見ています。製品によって、かなりクオリティの差があります。

光学ファインダーの例
ミラーレス一眼のEVFの例。

これは「光学ファインダーじゃなきゃイヤ」って人もいれば「EVFの方が露出補正やホワイトバランスの結果を確認しながら撮れるから便利」という人もいます。また「EVFは拡大表示」もできますからマニュアルフォーカス時に有利です。

まあ好みの問題ですが「一眼レフを使いながらファインダーを覗かない」手はありません。

最近、一眼レフを手にしながらファインダーを覗かず背面モニタを使ったライブビューで撮る人を見かけますが、それでしたらはじめからミラーレス一眼を選ぶべきでしょう。

ミラーレス一眼ならファインダーを持たない機種もありますから(特にエントリーモデル)、そちらならさらにコンパクトになります。

個人的には「次の動作を予測しづらいスポーツ」をガチで撮る人や昔から一眼レフを使っている人は光学ファインダーがよいでしょうが、これからデジタル一眼をはじめるのであれば、EVFをおすすめします。







11:ぶっちゃけ、安いのはどっち?

一般に、ミラーレス一眼の方が安いんじゃないかと思われていますが、実はそれほど差はありません。

わかりやすいところで、一眼レフとミラーレス一眼の両方をラインナップしているキヤノンのEOSで比べてみましょう。

すべて2018年8月末現在のとキヤノンのオンラインショップでの価格です。

エントリーモデルを安い順に並べて見ました。価格は拮抗してますね。

ボディーのみ 方式 センサーサイズ
EOS M100 ¥49,800 ミラーレス一眼
(EVFなし)
APS-C
EOS Kiss X90 ¥54,500 一眼レフ APS-C
EOS Kiss X9 ¥65,500 一眼レフ APS-C
EOS Kiss M ¥73,500 ミラーレス一眼
(EVF内蔵)
APS-C

価格は一眼レフかミラーレスか、よりもそのカメラのクラスに大きく左右されます。

エントリークラスでは5〜9万円、ミドルクラスでは10万円台、ハイエンドクラスでは20〜50万円くらいと見ていいでしょう。

で、どっちを買えばいいの?

ミラーレス一眼はデジタルならではの新しいシステムですから、登場当初は一眼レフに比べてカメラとして足りないところがたくさんありました。

その頃は、コンパクトデジカメ→ミラーレス一眼→一眼レフというランク付けがされても仕方がない感じでした。しかし現在は、ミラーレス一眼の完成度がかなり上がっています。なので、ミラーレス一眼も一眼レフも「デジタル一眼」というジャンルで同等のものと考えてください。

どちらが上ということはありません。

ではどっちを選べばいいのでしょう?

まあそれは上記11項目を吟味して決めるのがよいかと思います。向き不向きや好みの問題ですから悩んでください(無責任ですが)。

一眼レフかミラーレス一眼か、よりはイメージセンサーサイズや使いたいレンズの有無、背面モニタは可動するか、大きさや重さは許容範囲か、手に持ったときしっくりくるか、そういう視点で見るべきです。

5年後には、一部のプロカメラマンやマニアックなカメラ好きを除けば、ミラーレス一眼が主流になっていることでしょう。よって、一眼レフを選びたい積極的な理由がない限り、「困ったらミラーレス一眼」でよいかと思います。

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荻窪圭
【デジカメライター 荻窪圭】

老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。
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