久しぶりのカメラのトリセツです。
今までの3回でカメラで大事なのは「レンズ」って話をしたわけです。広角と望遠でどう違うか、背景がボケた写真を撮るにはどういうレンズを使ってどう撮るのがいいか。
レンズの違いと使い方がわかったところで、じゃあレンズを買おうかと思っても、見慣れないカタログなりWebサイトには似たようなレンズがたくさん。どれがどんなレンズかよくわからない。というわけで、今回はレンズカタログの見方とレンズの呼び方を解説します。
ニコンのレンズの名前が長い理由は?
レンズの名前はカメラメーカーによって違いますが、一番長々しいニコンのレンズ名を見てみましょう。
ニコンのエントリー一眼レフのレンズキットを購入すると、まずこのレンズがついてきます。
AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR
名前が長い!
そこでこの長い名前をバラしてみました。
AF-P:AFはオートフォーカスのこと。普通に考えたらオートフォーカスは当たり前なので、わざわざ書かなくてもと思うわけですが、ニコンは超老舗なのでオートフォーカスなんてない時代からレンズを作っています。(ちなみに当時のレンズを今のカメラで使うこともできます)だから、オートフォーカス対応レンズは頭に「AF」とつけて、区別する必要があったのです。
続いて「-P」の部分。これはオートフォーカスの種類を示しています。オートフォーカスの歴史は長く、AFの方式もいろいろ進化してきました。ニコンの場合「AF」「AF-S」「AF-P」の3種類があります。AF-Pは中でも一番新しい方式で、ちょっと前のカメラでは使えないものもあります。
DX:ニコンはAPS-Cサイズのフォーマットを「DXフォーマット」と呼んでいます(ディーエックスです。デラックスではありません)。なので、APS-Cサイズ用のレンズにはどこかに「DX」と入っています。ちなみに、35mmフルサイズのフォーマットを「FX」と呼んでいますが、レンズは元々35mmフィルム用なので、わざわざレンズ名に「FX」とは入りません。
NIKKOR:「ニッコール」。ニコンのレンズ名です。ブランド名をレンズ名に入れるかは会社によって違います。オリンパスは「M.ZUIKO」(マイクロ・ズイコー)と入っていますが、キヤノンは入っていません。
18-55mm:やっと大事なところが出てきました。焦点距離です。18mmから55mmのズームレンズということを示しています。35mmフィルム換算では1.5倍すればいいので「27-82.5mm相当」の画角となります。
f/3.5-5.6:一番明るくしたときの絞り値です(開放F値)。前の数字は「広角端」(ワイド端)の、後ろの数字は「望遠端」(テレ端)の開放F値となります。絞り値を「f/3.5」と表記するところと「F3.5」と表記するところがありますが、表している内容は同じです。ちなみに、「F/3.5」とは書きません。
G:絞りを駆動する方式や絞りリングの有無などでここが「E」だったり「D」だったりしますが、まあ最新のデジタル一眼レフで使う分には気にしなくてもOKです。最近のものはGです。
VR:バーチャルリアリティではなく、手ぶれ補正のこと。ニコンでは手ぶれ補正機構を「VR」と名づけていて、レンズ名にVRが入っていれば、手ぶれ補正搭載ということです。
いやあ、長いですよね。古くからカメラを作っているメーカーほど長くなる傾向はあります。古いレンズとの違いがわかるようにしなきゃいけないからですね。
でも「ねえ、今使ってるレンズ何?」と聞かれたとき、わざわざ「エーエフピー ディーエックス ニッコール……」と言う人はいません。たいていはそのレンズの「焦点距離と絞り値」をさくっと略して言っておわりです。
このレンズの場合は
「イチハチゴーゴーのサンゴーゴーロク」
と呼ぶのがポピュラーかと思います。聞いた人はそれで「ああ、そのスペックならエントリー向けのコンパクトなズームレンズだな」とわかるわけです。
コンパクトデジカメの世界ではレンズといえば「何倍ズームか」が問題となりますが、デジタル一眼を使っている人に「で、そのレンズは何倍ズーム?」と聞いてはいけません。
ズーム倍率より何mmから何mmまでのズームかの方が重要なので、何倍ズームなのかを意識して使う人はあまりいません。頭の中で「えっと、55÷18は……」と計算をはじめるか「まあ、3倍くらいじゃね?」と適当な値で済まされます。
キヤノンのレンズは短い名前です
ちなみにキヤノンの同等のレンズ、つまりエントリー向けのEOS Kiss X9のレンズキットのレンズを見てみましょう。
EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM
です。ニコンに比べて短いのがわかります。キヤノンも超老舗カメラメーカーですが、ニコンはマニュアルフォーカスの時代からずっと同じマウント(カメラにレンズを装着する接合部、及びその仕様)を使ってますが、キヤノンは1987年にオートフォーカスに対応するためにマウントを設計し直したのですね。だからいちいちレンズ名に「AF」って入れる必要がないのです。それ以前のレンズとは互換性がないので、レンズ名はシンプルです。
EF-S:APS-Cサイズカメラ用という意味。ニコンはDX用レンズを35mmフルサイズのカメラに装着できますが、キヤノンはできません。EF-SはAPS-CサイズのEOS専用となります。
ミラーレス機のEOS M用のレンズは「EF-M」で他との互換性はありません。
IS:イメージスタビライザーの略。手ぶれ補正機構搭載レンズにはISとついてます。
STM:レンズ内のAF駆動用モーターの種類で、USMとSTMがあります。
老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。