小さくて使いやすい「EOS M」。
キヤノンから初心者向けミラーレス一眼の大本命「EOS Kiss M」が発売されました。「EOS Kiss」といえば初心者・ファミリー向けデジタル一眼レフの定番ブランドで一番人気のシリーズ。最新モデルはKiss X9/X9iです。キヤノンの「一眼レフ」を引っ張る大ヒットシリーズです。
さてキヤノンは一眼レフとは別に「ミラーレス一眼」のシリーズも出しています。「EOS M」です。
EOS KissやEOS 80D、6Dといった製品は「一眼レフ」。対して「EOS M」はミラーレス一眼ですから、使えるレンズも違う、完全な別シリーズ。キヤノンは今まで「ミラーレス一眼」を「一眼レフ」を補完するカメラとしてラインナップに加えており、あくまでも「一眼レフ」が主、「ミラーレス一眼」は従という関係でした。
そんななか、EOS Mの新製品に「EOS Kiss M」という一眼レフのブランド名を付けてきたのです。EOS Mの初心者・ファミリー向けモデルというよりは「EOS Kissのミラーレス版」という位置付け。
つまり「EOS Kiss M」は、キヤノンが「本気でミラーレス一眼に取り組みはじめた」製品といえますし、ミラーレス一眼の「EOS M」シリーズの完成度が上がり、「EOS Kiss」という普及モデルの名を付けてもOKなレベルに達したともいえます。
ぶっちゃけていえば「これからミラーレス一眼の時代」ということです。
見た目は小さな一眼レフ(まさにEOS Kiss!)ですが、中身はミラーレス。ファインダーはEVFです。
EOS Kiss Mは初心者に最適か
EOS Kiss MはAPS-Cサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼。見た目が一眼レフっぽいのは、レンズの上にあたる凸部にEVFがはいっているから。エントリー機なのにちゃんとファインダーを持っているのがポイントであり、EOS Kissとしては外せないところだったのでしょう。
デザインも丸みを帯びたKissっぽいデザイン。
ただミラーレス化したことでとても薄く小さく軽くなってます。ファインダーを覗いてしっかり撮れるうえに、小さくて薄くて持ち歩き安いのが特長。さらに背面のモニタは一眼レフの「EOS Kiss」と同じバリアングル式で、タッチパネル付きです。
バリアングル式なのでくるっと回転させれば自撮りもできます。
初心者やファミリー向け(特に女性を意識してる感じ)なので操作はシンプル。電子ダイヤルもひとつしかありませんしボタンも少なめです。
基本的には「オート」で使うカメラといっていいでしょう。
スマホで写真にハマった人が最初に使うカメラとしてもよいでしょう。1枚撮れば「スマホでは撮れない写真が撮れる」とわかります。
カメラを使い慣れており、自分であれこれセッティングして撮りたい人が、安くてコンパクトなカメラが欲しいと思って買うとイラっとするかもしれませんが、「オート」の性能がいいので割り切って使うならあり。
初心者がターゲットなので、操作も徹底的に親切。
撮影モードを変えたり、何か設定しようとするたびに画面に解説が表示されます。親切すぎるほど。
どのボタンをタップすると何が起きるのか、教えてくれるのも親切。こういうアイコンって、初心者ほど「タップしたら何が起きるかわからないので触らないでおこう」と思いがちですから。
また、オートモードでもタッチパネルを使って色を調整したり明るさを変えたりいろいろ楽しめるのはさすがです。
クリエイティブモードでデジタルエフェクトをかけた写真を撮るのも、タッチパネルでさっと設定を変えられてわかりやすいので誰でも楽しめます。
油絵風HDRで撮ってみました。こんな絵画調の印象的な写真もOKです。
カメラを使い慣れた人には操作がまだるっこしく感じるかもしれませんが、タッチパネルを上手に使えばけっこう快適に使えると思います。まあ、もっとボタンやダイヤルが多くてさっと設定を変更できるカメラがよければ、EOS M5という製品もありますし。
タッチパネルの反応もこのクラスでは最高ではないでしょうか。スマホを使う感覚でOKです。
今や欠かせないスマホとの連携もばっちりです。Bluetoothを使っていったんつないでおけば、いつでも好きなときにカメラ内の写真一覧から欲しい画像をスマホに転送できます。スマホに一度転送してしまえば、あとはメールしようがメッセージで送ろうがSNSにシェアしようがインスタしようが自由。
まさにイマドキの写真を楽しむためのカメラといっていいでしょう。
残念なのは、USB充電に未対応なこととボディ内手ブレ補正を持たないことでしょうか。
どんなレンズキットがあるの?
基本的に「スマホで写真を撮ってたら楽しくなったので、今度はデジタル一眼を使ってみたい」という人にお勧めのカメラです。ただややこしいのはレンズキットの種類が多いこと。
はじめてデジタル一眼を使うならレンズがセットになったレンズキットを買うのが一般的ですが、EOS Kiss Mの場合、レンズキットのパターンが4種類もあるのです。
いったいどれを買えば幸せになれるでしょう?
まずはその4パターンをチェック。
EF-M 15-45 IS STM レンズキット
EOS Kiss Mのボディと15-45mmのレンズキットです。もっともベーシックで低価格な組み合わせです。レンズが3倍ズームで物足りないかもしれません。
ズームについては下記を参照してください。
EF-M 18-150 IS STM レンズキット
EOS Kiss Mのボディと18-150mmのレンズキットです。EOS M用では一番高倍率なズームレンズで、広角から望遠までこれ1本で済みます。便利ですが、その分レンズは長め。
ダブルレンズキット
EOS Kiss Mのボディと14-45mmのレンズキットに22mm F2.0のレンズを追加した「ダブルレンズ」のキットです。ズームレンズと単焦点レンズの組み合わせで、22mmレンズはズームはありませんが薄くて軽いのでこのレンズをつけると携帯性もあがります。
ダブルズームレンズキット
EOS Kiss Mのボディに14-45mmの標準ズームレンズと55-200mmの望遠ズームレンズのキットです。ズームレンズが2本付属するので「ダブルズームレンズキット」。「ダブルレンズキット」と混同しないよう気をつけてください。
これらのレンズキットに登場するレンズは4本。それぞれ撮り比べながらどのレンズキットがお勧めかを探っていきます。
4本全部並べて見ました。EOS M用の「EF-Mレンズ」の特徴がこの写真に現れてます。「レンズの太さが全部同じ!」なのです。
まずは標準ズームレンズともいえる15-45mmから。どのレンズも同じ位置から撮影してるので画角(一度に写せる角度)の違いを見てみて下さい。
老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。