顔認証(Face ID)は指紋認証(Touch ID)に比べてどうなの
ホームボタンがなくなって気になるのは、指紋認証。今までホームボタンに指を当てると一瞬で指紋認証されてロックがはずれました。iPhone Xでは指紋認証がなくなりました。代わりに備えられたのが「Face ID」、つまり顔認証です。
これが使ってびっくり。予想以上に素早くきちっと認証してくれます。
顔がしっかりわからないような暗い場所でもちゃんと顔を認証してくれました。
その秘密はフロントカメラの横にある赤外線です。
下の写真を見ると、小さく赤く光る点があります(赤外線なので肉眼では見えません)。顔認証時はこの情報も使うのです。
Face IDでは顔を登録するときに、フロントカメラを見ながら顔をぐるっと回させられます。いろんな角度から顔を記録するわけですが、そのとき、赤外線を照射して「顔のデータを立体的に」把握してるのです。単に顔の写真を撮って同じ顔かどうか識別してるわけじゃないのですね。「立体」的に把握しているので、顔写真を見せても認証しないのです。
顔の登録中はこんな感じ。
さらに赤外線を照射してその反射を見てますから、暗い場所でもOKなのです。
眼鏡をかけてもはずしてもOKです。
目や鼻や口を覆ってしまうとダメです。冬場はマスクをする機会も多いでしょうが、顔認証時はマスクをはずしましょう。
帽子はかぶっていてもOKです。
顔認証は一瞬で行われるので、使っているうちにまったく意識しなくなります。
動画ですとこんな感じです。
画面をタップするとスリープから復帰し、上面の赤外線センサーが働いて顔を認証し(ロックがはずれるアニメーションがある)、フリックするとさっとホーム画面に行きます。一瞬なのがわかるかと思います。
では従来の指紋認証と比べるとどうでしょう。
指紋認証は手袋をしていたり雨などで指が濡れているとうまくいきませんでした。その点、顔認証は「顔が出ていれば」OKです。
具体的には長期間使ってみないとわかりませんが、数日使った感触では「指紋認証より簡単で便利!」でした。
Apple Payで買い物をするときは、いったん顔認証させてからになります。ロック画面で電源ボタンをダブルタップして顔認証をして支払う感じ。
レジで「QuickPayで」あるいは「iDで」といったあとにダブルタップして端末をちょっと見つめればOKです。
カメラ性能はどこが進化したの?
カメラは横に2つ並んだデザインから縦に2つと変わりました。
上のカメラが広角カメラ、下のカメラが望遠カメラです。
基本的にはiPhone 8 Plusに準じてますが、望遠カメラ側が待望の進化を遂げました。望遠カメラのレンズのF値がF2.8からF2.4に明るくなり、なおかつ望遠カメラ側にも手ブレ補正がついたのです。
望遠カメラの焦点距離はちょっと短くなりましたが(56mm相当が52mm相当に)、使い勝手はぐっと上がりました。
フロントカメラの性能は変わりませんが、赤外線を使った立体認識ができたことで、フロントカメラでも背景をぼかすポートレートモードを使えるようになりました。
1〜2年でこれがスタンダードになりそう
iPhone 8/8 Plusは「今のiPhoneの完成形」、iPhone Xは「未来のiPhoneを先取り」したものと思えばOKです。
でも予想以上にiPhone Xの完成度は高く、本体と画面が一体化したデザイン、OLEDの鮮やかで明るくて昼間の屋外でも見やすい画面、「ホームボタン? そういえば昔はそういうのもあったねえ」と言い出しかねない使いやすさは、来年以降のiPhoneはこれがベースになっていくのだろうなと思わせてくれます。
さらに、赤外線やデュアルカメラを使って顔を立体的に捉える技術は将来もっと応用され、様々なシーンで使われるようになるでしょうし、面白い対応アプリも続々と出てくるでしょう。
スペックや写真から想像できる以上にきちっと作り込んでくるのがアップルの良さ、というのを再認識したのがiPhone Xでした。
ひとつひとつのスペックを見ると、すでに他社が実現していたものも多く含まれてますが、大事なのはひとつひとつの技術では無く、それをどう統合して、その技術を活かした体験をもたらすかであり、アップルの長所はまさにそこにあるわけです。
iPhone Xもそれを味合わせてくれました。
1〜2年もすればこれがスタンダードになるでしょう。
老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。