モバイルバッテリーを選ぶときの3つのポイント
モバイルバッテリーにはデザインも価格も非常に多くのものが出ています。でも基本的には「内蔵しているリチウムイオンバッテリーに充電した電力をスマートフォンなどのモバイル機器に給電する」という単純な仕組みなので、チェックポイントだけしっかり頭に入れておけば必要なものを選べます。
その3つは、
1:バッテリーの容量
2:モバイル機器への充電方法
3:信頼できるブランド
です。
順番に見ていきましょう。
1:容量はどのくらいあればいい?
どのモバイルバッテリーでも必ず書いてあるのが「容量」。どのくらい電気を溜められるかですね。基本的に「mAh」という単位で示されますが、数字だとわかりにくいためか「スマートフォン充電1回分」とか「2回分」と書いてあったりもします。
ただ、スマートフォン何回分、という表記はアテになりません。
とある製品の例を見てみましょう。この製品には「スマートフォン1回分」充電できますと書いてありますが、裏面をよく見ると「電池容量1650mAhのスマートフォンの場合」とあります。
スマートフォンのバッテリー容量が1,650mAh前後だったのは10年以上前の話。今はエントリーモデルでも3,500mAh以上、スタンダードからハイエンド機なら4,000〜5,000mAhの容量があります。1650mAhを1回分だと半分にも満たないのです。これはアテにならないですよね。
では、どこを確認すべきか?
必ず「mAh」(ミリ・アンペア・アワーと読みます)の容量を見ましょう。数字が大きいほど容量も大きいのですが、その分大きく重くなり価格も上がります。
今のスマートフォンなら、5,000mAhの製品がポピュラーと言っていいでしょう。価格も大きさも手頃です。
ただ、5,000mAhあれば、5,000mAhのバッテリーを持つスマートフォンを1回分フル充電できるか、というと実はそうではありません。
理論上、どうしても電力のロスが発生します。だいたい3〜4割以上はロスすると思って構いません。
大雑把にいえば、5,000mAhのバッテリーでも実質3,000mAh分くらいと思っていいでしょう。
それでも20%まで減ってしまった、なんとか帰宅まで持たせたいという感じで使うなら5,000mAhクラスで十分です。
徹夜で遊ぶことが多いからそれでは心もとない、外で動画を見ることが多い、ゲームをすることが多いなどバッテリー消費が大きな使い方をする人なら、10,000mAhクラスのものがおすすめです。10,000mAhのモバイルバッテリーなら最新のスマートフォンでもフル充電できるでしょう。
結論:最低でも5,000mAhクラスのものを。余裕があるなら10,000mAhあれば安心。
2:モバイルバッテリーのコネクタはUSB Type-Cが今の標準です
一般的なモバイルバッテリーはUSB端子を使ってモバイル機器に給電しますが、そうではないものが2つあります。
ひとつはワイヤレス充電。
Qi(チー)というワイヤレス充電の規格があり(最近はQi2という新しい規格も発表されました)、Android機やiPhoneの一部の機種が対応しています。
機器にぺたっとつけるだけで充電できる上にケーブルが不要でものすごく楽チンですが、難点が2つあります。
ひとつは充電に時間がかかること。ケーブルを使った充電に比べると時間がかかるので急いで充電したい時には向きません。
もうひとつはケーブル充電のとき以上に「ロス」が大きいこと。モバイルバッテリーの限られた電力を使うのですから、効率が悪くなるのは避けたいはず。充電器側とスマートフォン側の位置がぴったり合わないとさらに効率が落ちます。
2番目はLightning端子直結型。
ユーザーが多いiPhoneならではなのですが、モバイルバッテリーから直接iPhone専用のLightning端子が飛び出ているタイプがあります。これならケーブル不要でガチャっと装着するだけで便利なのですが、今から買うのはおすすめしかねます。理由は単純。
2023年のiPhone 15からアップルはLightningコネクタからUSB-C(USB Type-C)に切り替わりました。将来的に使えなくなっては勿体無いですよね。
というわけで、もっともポピュラーなUSBを使ったケーブルでの充電が一番安心。
ただ、よく見るとUSB端子にいくつか種類があります。
現在市販されているモバイルバッテリーで観ることができるのは3種類あり、USB端子には複数の形状があります。
モバイルバッテリーで使われるのは3種類。
USB Type-AとmicroUSB(USB Type-Bのマイクロサイズで、micro-Bと呼ばれます)、そしてUSB Type-C(アップルではUSB-Cと呼んでいる)です。
かつてはmicroUSB(電気を受ける側。モバイルバッテリーに充電するときに使います)とUSB Type-A(電気を供給する側。充電したい機器をつなぐ)の2つでしたが、ここ数年で状況が変わってきました。2014年に策定された新しい「USB Type-C」端子の登場です。
USB Type-C端子はType-AとType-Bの両方を兼ね備えた規格で、今はmicroUSB端子からUSB Type-Cに置き換わりつつあります。
USB Type-Aは広く普及しているため、今でも多く使われています。
そこで最近のモバイルバッテリーではUSB Type-C(充電と給電の両方に使う)とType-A(給電に使う)の両方を備えるものが一般的です。Type-Aは古い機器の充電に使うと思っていいでしょう。
もうひとつUSB充電に関して重要な項目があります。
それは供給する電力。USB端子からどれだけの電力を供給できるかで、それが小さいと充電に時間がかかります。
今はUSB PD(PDはPower Deliveryの略)という規格が登場し、それに対応したモバイルバッテリーが増えつつあり、従来より大きな電力を供給できる規格でUSB PD対応のスマートフォンも一般的になってます。
USB PDにはさらに供給できる電力が何パターンも規格化されていてちょっとややこしいのですが、長く使うならUSB PD対応にしとくべしといっていいでしょう。
3:廃棄も考えてブランドを選ぶべし
3番目のこれが一番難しい点です。
モバイルバッテリー(に限らないのですが)、リチウムイオン充電池は非常にデリケートで、発熱したり発火したりする危険性があります。もちろんそんなことが起きてはいけないので、保護回路が入っていてトラブルが起きないように設計されていますが、何度も落としているとその衝撃で内部に損傷が発生することもおります。また、何年か前には電車の中でバッグに入ったモバイルバッテリーが発火したというニュースもありました。不燃ゴミとして出されたリチウムイオン充電池がゴミ収集車の中で発火する(プレス式の場合内部でゴミを圧縮するため、リチウムイオン充電池が潰されて発火してしまう)という事例も聞きます。
具体的にどれがいい、悪いというのは一概には言えませんが、安価な輸入品は避けてある程度実績のあるブランドの製品を選ぶのが一番です。
最低限「PSEマーク」と「リサイクルマーク」がついた製品にしましょう。
家電量販店やコンビニで売っているブランドはある程度信頼できると思っていいでしょう。
また、捨てる時にモバイルバッテリー(に限らずリチウムイオン充電池類)は不燃ゴミとして出してはいけません。危険だからです。
ゴミの処理は各自治体が行ってますが対応はさまざま。
たとえば、東京都目黒区は自治体で回収を行っており「区内10カ所の施設に設置した回収ボックスで小型充電式電池等(リチウムイオン電池、モバイルバッテリーなど)の回収を行っています。」とアナウンスしています(2023年9月現在)。
目黒区に隣接する世田谷区では「処理施設では、充電式電池等を危険性のあるものと位置付けており、区がごみとして搬入できないため、収集できません。区が区内10か所に設置している小型家電リサイクルボックスにも入れないでください。」と、自治体では対応してません(2023年9月現在)。
そのため、お住まいの自治体がどう対応しているかをチェックする必要があります。
未対応の場合はJBRCという充電式電池のリサイクルを行う団体があり、家電量販店などで回収をしてもらえます。
ただ回収対象となっているのはJBRC(https://www.jbrc.com)の会員企業に限られます。
店頭でよく観るブランドとしては、エレコム株式会社、アンカージャパン、ティーアールエー(ブランド名はcheero)、オウルテックなどが会員です。JBRCの会員企業であればある程度安心でき、使わなくなったときの処分も可能といっていいでしょう。
今はモバイルバッテリーも無数の製品があり選び放題ですが、長く便利に使うことを考えればUSB PD対応で安心できるブランドの製品にすべきです。
安さにつられて使い勝手が悪い、あるいは危険な製品に手を出さないようご注意を。
老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。