USB-Cの採用で非常に便利に
2番目に「おお、これは便利になった」と思ったのはUSB-C(USB Type-C)端子の採用です。
EUがスマートフォンやタブレットやデジタルカメラの充電端子をUSB Type-Cに統一することを定めたのがきっかけといえますが、ユーザーとしてもありがたいことです。
ちなみに、iPhoneが採用している独自企画のLightning端子の誕生は2012年。iPhone 5のときでした。それまでの大きなコネクタから超小型で表裏なく差し込めて非常に小さなLightningは画期的だったのです。
USB Type-Cの規格が策定されたのが2014年で、実際に製品に搭載されるのはそのあとですから、Lightning端子の方が早かったのですね。
ですが、Android機の充電端子はUSB Type-Cに置き換わり、それ以外のデジタル機器もUSB micro-BからType-Cへの移行がすすんでいます。デジカメはもちろんのこと、モバイルバッテリーもLEDライトも充電して使う機器のType-C対応が当たり前になりました。わたしが先日購入した自転車用LEDライトも充電端子がType-Cでした。
iPhoneがUSB-C端子に切り替えるタイミングとしてはよかったと思います。iPadは既にUSB-Cになってましたし。Lightningはいち早く登場して10年ちょっとがんばってくれたのです。
みながUSB Type-Cになることで、所有するケーブルの種類をぐっと減らせますから利便性は確実に上がります。
たとえば、デジタル一眼とUSB-Cケーブルでつなげばその場で気に入った写真をiPhoneに転送できます。これは便利です。
ただし、USB-Cはひとつのコネクタでいろんなことができる汎用性の高さ故、様々な細かい規格があり、ケーブルがどの規格にまで対応しているかで違いが出てしまいます。
たとえば、iPhone 15 Pro/Pro MaxのUSB-C端子はデータ転送速度が最大10Gbps(USB 3.2 Gen2)と高速転送に対応してますが、付属するケーブルは最大480Mbps(USB 2.0相当)までしか対応していません。
パソコンなどとつないで大量のデータ転送をする機会が多いなど、高性能を追求する必要がある人は別途ケーブルを用意すればOK、そうじゃない人は付属のケーブルでも問題ないでしょう。
カメラの進化は予想以上でした
3番目のポイントはカメラです。
わたしがiPhone 15 ProではなくPro Maxを選んだ一番の理由はカメラ。望遠カメラが5xに進化したからです。
iPhone 14 Proを使っていて不満だったのが3xの望遠カメラでした。
iPhone 14 Proではメインカメラが48MP(4800万画素)に増え、2xのデジタルズーム時の画質がよくなり、カメラアプリ上でも1xと3xの間に2xが追加されました。そうなると、2xと3xの差が小さく、わざわざ望遠カメラを積むのならもうちょっと望遠がいいな、3xって中途半端だなと感じていたのです。
そこにきたのが新しい5x望遠のカメラ。35mm判換算だと120mm相当です。2xの次が5xというのは開きすぎな気もしますが、「ここは望遠で撮りたい」というとき、5xだとすごく望遠らしい写真を撮れるので楽しくなります。
それもプリズムを仕込んで中で4回光を反射させることでレンズ長を稼ぐという大胆な試みもうまくいったようで、画質もなかなかのもの。
0.5x(超広角)、1x(広角)、5x(望遠)と幅広いレンジになり、画質もけっこう安定しているので、ますますiPhoneのカメラを使う機会が増えてます。
また、今までは写真は常に12MP(1200万画素)で記録されていたのですが、今回はメインカメラで1x〜2x未満のときに限り24MP(2400万画素)で記録されます(変更も可)。
おかげで一番使うレンジでワンランクディテールが細かい写真を撮れます。
さらに、1xボタンをタップすると、1.2x(28mm)、1.5x(35mm)とその中間もさっと選べます。カメラ好きにはお馴染みの焦点距離です。
でも、一番グっと来たのが自動的にポートレート仕様で撮ってくれる機能です。
人物や犬猫を撮ろうとすると四角く枠が出てそこに自動的にフォーカスが合うのは以前からですが、そのとき、画面の隅に「f」のアイコンが出て自動的にポートレート仕様で撮影してくれるのです。具体的にはあとから前景や背景をぼかせるように距離情報を一緒に記録してくれます。これが素晴らしいのです。
いちいちポートレートモードにする必要がありませんから。
また、撮影時に被写体をタップするとこの機能が働きますから、いつでもポートレート仕様で撮影できるわけで、しかもあとから写真アプリでボケのオンオフやフォーカス位置の変更もできます。
以前に比べるとボカしの処理にも不自然さが減り、気軽に使えます。
全体にPhotonicEngineを使ったコンピュテーショナルフォトグラフィー……つまり、デジタル画像処理のレベルが上がり、小さなカメラを3つしか積んでないとは思えないほどしっかり撮れるのです。
動画派4Kの60fpsに対応。USB-Cで接続した外部ストレージへのProRAWでの録画もできますが、そこまでするのは本格的な映像作品を作る人ですね。
円安のせいとはいえ高額になったのは残念です
と、買い換えて良かったと思った点を3つあげましたが、他にも進化点は多く有ります。
新型のA17Proチップはより高速で賢い処理をしてくれますし、iPhoneの伝統ともいえたスライド式の消音スイッチはアクションボタンになりカスタマイズできるようになりました。
カメラやボイスメモの起動がポピュラーですが、ショートカットや任意のアプリの起動にも使えます。
もちろん消音機能を割り当てることもできます。
機能面では本体を横向きにしてMagSafe充電器にセットすると時計やカレンダーとして使えるスタンバイ機能なども追加されましたが、これはiPhone 15シリーズというより、iOS17の新機能なので割愛します。
基本性能に関しては、順当にレベルアップしてるという感じで、ディスプレイは明るくて見やすいですし、リフレッシュレートも120Hzに対応しているのでスクロールも滑らかです。
基本的な処理をするCPU、グラフィック処理に特化したGPU、AIなどの処理をするニューラルエンジン、などなど必要な機能をひとつにまとめたプロセッサもA17 Proになりより高速になりました。
逆に気になったのは2点。
ひとつは熱です。非常にプロセッサを酷使する作業をさせたとき、内部が高温になってアラートが出たことがありました。日常の利用ではまず大丈夫でしょうが、昨今の真夏は非常に過酷な気温になるので、内部の温度が上昇しすぎて、それを抑えるために画面が暗くなったり、アラートがでることがあります。
iPhone 15 Pro Maxに限ったことではありませんが、少し熱くなりやすい気はします。
もうひとつは、誰もが言っておりますが、価格ですね。価格。
おそろしいことに、米国での価格はここ5年ほど変わってないのです。だからiPhoneが値上がりしてるというわけではありません。
原因は円安です。その影響で、日本での発売価格が連続して上がっているのです。1$が100円を切っていた時代を知っているとものすごく高くなっている気がしますね。
円安により高額になってしまったのがユーザーとしては一番残念なところですが、それ以外は予想以上に変化を感じられてよいモデルだと思います。
特に、他のガジェットでUSB Type-Cの環境が揃っているなら、今回のiPhone 15シリーズにすることで持ち歩いたり家で使うケーブルが整理されて非常に便利になります。
ここではわたしが購入したiPhone 15 Pro Maxの話をしましたが、iPhone 15もiPhone 14に比べてカメラ性能がぐんとあがり、USB-Cになり、ノッチがダイナミックアイランドになるなど大きな進化がありましたから、買い換えると違いを感じられるでしょう。
2024年秋に大幅に円高になっている、という確信があるのでなければ、今回買い換えてしまうのはアリでしょう。
※本文内の価格情報は2023年11月16日時点でのapple.comの価格です。
老舗のデジタル系フリーライター兼カメラマン。パソコン雑誌のライターだったが、今はカメラやスマホが中心、ときどき猫写真家になる。「iPhoneカメラ講座」「這いつくばって猫に近づけ」など連載中。近著は「東京古道探訪」。歴史散歩ガイドもやってます。