動画徹底レビュー【前編】
動画徹底レビュー【後編】
ジンバルで何ができるか?
中国メーカーを中心に数多く発売されているカメラ用スタビライザー「ジンバル」をご存知だろうか?
スマホ用のジンバルが話題となっているのでご存知の方も多いとは思うが、手ブレを極限まで抑えた滑らかでヌルヌルした映像を比較的簡単に撮影することができる。これまで三脚やスライダー、クレーン等のプロ用機材を駆使して撮影していた映像表現にさえ、手が届くようになったのだ。
そんな「ジンバル」だが、一昔前と比べて性能や操作性がグンと上がり、価格も抑えられお求めやすくなってきた。もはやプロ御用達の機材ではなく、我々一般消費者が手軽に扱える機材となりつつあるのではないだろうか。動画ファンならぜひ持っておきたい機材のひとつだ。
新製品ZHIYUN WEEBILL LAB
各メーカーからさまざまな製品がリリースされ、しのぎを削っているジンバル戦国時代。
そんな中、満を持して登場したのがZHIYUN(ジーウン)の「WEEBILL LAB(ウィービルラボ)」だ。これまで数多くのジンバルをリリースしてきた老舗メーカーZHIYUNの新製品となる「WEEBILL LAB」は、他のジンバルとは明らかに異なる革新的なプロダクトデザインとなっており、これまで想像していなかった快適な撮影を実現している。
今回はそんな本製品(デモ機)を長期レンタルして使い込んできたので、同じくカメラ用ジンバルであるDJI「RONIN-S」とも比較しながらレビューしていこう。
WEEBILL LABの2つの特徴
前述した通り、「WEEBILL LAB」は他のジンバルとは明らかに異なるデザインとなっており、このデザインだからできる、このデザインでしかできないことが随所に散りばめられている。筆者が長期間にわたって使用して感じた特徴は、ズバリ「小型軽量」そして「機動力」だ。
・小型軽量
大きさはA4サイズに収まり、重さは970gと他のジンバルと比べコンパクトに設計されている。「RONIN-S」は1.84kgと運用にかなりの負担がかかるが「WEEBILL LAB」なら気軽に持ち運びができる。
・機動力
機動力こそが「WEEBILL LAB」の最大の特徴となっており、このプロダクトデザインの意味するところとなっている。これまでのジンバルでは、ローアングルの撮影時には電源を落とし、ジンバルを持ち替える必要があった。一方、「WEEBILL LAB」は、ミニ三脚を付け替えハンドグリップとして運用することで、ローアングルポジションに瞬時に移行できる。
手ブレを抑える6つのモード
3軸ジンバルは「ピッチ軸(チルト)」「ロール軸(回転)」「ヨー軸(パン)」の3軸の回転をリアルタイムで制御することで手ブレを極限まで抑えることができる。「WEEBILL LAB」はこれら3軸の制御を撮影シーンによって使い分けることが可能となっており、基本モード3つと映像表現をダイナミックに見せる特殊モードが3つの計6つのモードが用意されている。
・基本モード1:パンフォローモード
モード切替スイッチを「PF」にすることでパンフォローモードとなる。このモードでは「ピッチ軸(チルト)」と「ロール軸(回転)」の動きがロックされ、「ヨー軸(パン)」のみ追従する。
・基本モード2:ロックモード
モード切替スイッチを「L」にすることでロックモードとなる。このモードではすべての軸がロックされ、カメラが常に一定方向を向き続ける。
・基本モード3:フォローモード
グリップ部の背面の「トリガー」を押し続けている間はフォローモードとなる。このモードでは「ロール軸(回転)」の動きがロックされ、「ピッチ軸(チルト)」と「ヨー軸(パン)」を追従する。
・特殊モード1:POVモード
「POVボタン」を押すことでPOVモードとなる。このモードでは「ピッチ軸(チルト)」と「ヨー軸(パン)」の追従に加え、「ロール軸(回転)」の回転を45度までフォローする。
・特殊モード2:PhoneGoモード
「PhoneGoボタン」を押している間はでPhoneGoモードとなる。このモードは、「ピッチ軸(チルト)」と「ヨー軸(パン)」を高速追従してくれる。スポーツや動物など動きの速い被写体を撮影するシーンで有効だ。
・特殊モード3:Vortexモード
「PhoneGoボタン」を2回押しすることででVortexモードとなる。このモードでは「ピッチ軸(チルト)」が90度上を向き、ジョイスティックの操作により「ヨー軸(パン)」が360度回転する。その名の通り、渦巻きのようなダイナミックで飛び道具的な映像表現が可能だ。
・位置のリセット・自撮りモード
また、その他に覚えておきたい機能として、グリップ部背面の「トリガー」を2回押しすることで「ピッチ軸(チルト)」を初期位置にリセットできる他、「トリガー」を3回押しすることで「ヨー軸(パン)」が180度回転し自撮りモードとなる。
その他の特徴
・ロック機構
「WEEBILL LAB」に限らず、ジンバルではその特性上バランスどりが必須となっている。ここでは詳しい説明は省くが、電源を入れる前に、カメラを乗せた状態で3軸のバランスをしっかり調整する必要があるのだ。その際に役に立つのがロック機構だ。すべての軸が個別にロック可能となっており、バランス調整をスムーズに行うことができる。また、持ち運び時にもロックすることで、無駄な動きがなくなり運用も楽にできる。
・スタンバイモード
「POVボタン」を長押しすることでスタンバイモードとなる。このモードではすべてのモーターがOFFの状態となるため、前述したロック機構を併用することで持ち運ぶ際に便利だ。
・2層プレート
これまでのジンバルでは、カメラをジンバルから取り外してしまうと「ピッチ軸(チルト)」のバランスが崩れてしまうため、乗せなおす際には再度バランス調整を行う必要があった。しかし「WEEBILL LAB」はカメラプレートが2層構造になっており、カメラを再度乗せなおした場合でもバランスが崩れないので、再調整がまったく必要ない。
・ジンバルによるカメラ操作
付属のUSBケーブルでジンバルとカメラを接続することで、絞りやシャッタースピード、ISO、露出などの変更が可能となっている。設定変更時はジンバルのOLEDディスプレイを見ながらで直感的な操作ができるのも魅力だ。(接続するカメラによっては操作できない場合もある)
・スマホ連携
スマートフォンと専用アプリを使用した「ViaTouch」コントロールシステムにより、カメラのフォーカスポイント、絞り、シャッタースピード、ISOなどのさまざまなパラメータをスマートフォンから設定可能だ。また、撮影者がスタビライザーを離れて遠隔操作することも可能となる。(接続するカメラによっては操作できない場合もある)また、高解像度映像をワイヤレスでスマホに送信するため、サブモニターとしても活用できる。(スマホ用クランプはオプション)
・フォローフォーカス
サーボフォーカスコントローラーを使ってジンバルのホイールを回すことで、気軽にフォローフォーカスが楽しめる。(サーボフォーカスコントローラーはオプション)
WEEBILL LABの課題
これまでレビューしてきた通り、まさに革新的なジンバルといっても過言ではない「WEEBILL LAB」だが問題点もある。ここでは筆者が長期間使用して見えてきた問題点をご紹介する。ちなみに現時点でいくつかの問題点はファームウェアアップデートで対策済みだ。
・バランス調整の限界
全体的に小型でコンパクトなジンバルだが、その弊害として大型のズームレンズを付けた場合にカメラによってはアイカップと「ロール軸(回転)」のモーター部が干渉してしまう場合がある。この場合、特徴であるローアングルポジションへの移行が難しくなるので注意が必要だ。
・小型軽量化による誤操作
小型軽量化したことによってグリップ部にコントロール系が集中している。実際に運用してみるとわかると思うが、グリップ部にコントローラー系がレイアウトされていると、意図しない操作をしてしまうことがある。この問題はファームウェアアップデートで対策済みであり、十字ボタンの上を長押しすることでHOLD状態となり、操作が無効となる。
・ロック解除忘れによるモーターへの負担
バランスどりや持ち運びの際に便利なロック機構だが、ロックの解除を忘れてしまうと映像が乱れてしまうだけでなく、モーターに負担がかかり発熱してしまう。この問題はファームウェアアップデートで対策済みであり、ロックをかけたままの状態だとモーターがオフとなる。
WEEBILL LABの購入について
WEEBILL LAB」はAmazonをはじめ、さまざまなオンラインストアで販売されているが、日本正規代理店はVANLINKS株式会社となっている。VANLINKS株式会社が展開している販売網以外で購入した場合、サポートが受けられないので注意したい。安心してお使いいただくためにも、下記に販売チャネルを明記しておこう。
・Amazon
・ヨドバシカメラ
・ビックカメラ
・システムファイブ
・機材屋
・フジヤエービック
・ストロベリーメディアアーツ
また、ヨドバシカメラの一部店舗でデモ機を展示しているので、気になった方は実際に触れてみるのもいいだろう。
【ヨドバシカメラデモ機設置店舗】
・マルチメディアAKIHABA 3F
・マルチメディア町田 1F
・マルチメディア横浜 3F
・マルチメディア梅田 3F
・マルチメディア京都 1F
・マルチメディア博多 1F
・マルチメディア札幌 2F
※本文内の価格情報は2019年4月4日時点でのAmazon.co.jpの価格です。
トリセツ編集部 編集長。トリセツの広報としてプロモーション業務とメディア運営を手がける。また各方面でプロモーション、デザイン等の業務に携わっている。