2023年6月14日より販売が開始されたゲーミングUMPCの『ASUS ROG Ally(エイスース アールオージー エイライ)』。発売日直後に秋葉原に足を運んでみたところ、ヨドバシカメラなど各所で大々的なキャンペーンが展開されており、メーカーもかなり力を入れていることがわかりました。
当初、本機を購入する予定はなかったのですが、たまたま6月の頭に実機のデモ機を触ってその素晴らしさに触れてしまったため、急遽購入を決定。このレビューを書くまでに発売日から10日ほど使用してきましたが、そこから分かった魅力や特徴について今回はレビューしていきたいと思います。
Steam Deckの約5倍のマシンパワーを持つ「AMD Ryzen Z1 Extreme」を搭載
そもそも「ゲーミングUMPCってなんだ?」という人も多いともいますが、この「UMPC」とはUltra Mobile PCの略語で、簡単にいうとゲーム向けの超小型ノートパソコンのことをさしています。そのため、一見普通のゲーム機の用にも見えますがWindows 11が搭載されており、ノートPCのようにある程度普通のパソコンと同じようなことができるようになっています。
こうしたゲーミングUMPCと呼ばれるマシンは以前から存在していたものの、ニッチな市場で一部のコアファンが楽しんでいるものとなっていました。そうした空気を一気に変えた感があるのが、昨年12月にValveから発売された『Steam Deck』です。普段それほどPCゲームに触れてこなかった層にも訴求したことで、このジャンルのゲーム機の扉を大きく開いてくれた感じがします。
さて話を元に戻すと、今回発売された『ASUS ROG Ally』には、8コア16スレッドの次世代プロセッサーである「AMD Ryzen Z1 Extreme」が搭載されています。マシンのパワーを表す指標として、1秒間に浮動小数点演算が何回できるか表した「FLOPS(フロップス)」という単位がありますが、『ASUS ROG Ally』では『Steam Deck』の約5倍となる8.6TFLOPSを実現しています。
搭載されているディスプレイは、フルHD(1920×1080ピクセル)が表示可能なことに加えて、こうした携帯ゲーム機としてはめずらしくリフレッシュレートも120Hzを実現しています。これにより、ゲームによっては、ヌルヌルとした動きが楽しめるというのも本機の魅力です。
『ASUS ROG Ally』のパッケージに同梱されているのは、本体のほかマニュアル類とACアダプターのみといったシンプルな構成になっています。それに加えて、箱の上蓋側に簡易的なスタンドも付属しています。専用のケースなどは別途購入する必要があるので、必要に合わせてそれらも購入しておいたほうがいいでしょう。
ハイエンドのマシンであるにもかかわらず、それほど重くないところも特徴のひとつとなっています。公式のデータでは約608グラムと記載されていましたが、実際に測ってみたところ618.5グラムとなっていました。ただ、筆者の使用しているマシンには内蔵のSSDを2TBのものに換装してあり、液晶保護シートも貼っている状態であったため、その分の誤差といえそうです。
『ASUS ROG Ally』のボタン配置は、比較的一般的なゲーム機を踏襲したものとなっています。左右のジョイスティックに加えて、右側には十字キー、として左側にはABXYボタンを配置。前面に開けられたスリットからは、Dolby Atmos搭載のステレオスピーカーで迫力のあるサウンドも楽しむことができます。
背面側には通気口が開けられているなど、冷却対策も万全に行われています。ちなみに背面側にマクロボタンがふたつ用意されており、こちらで好きなボタンなどを割り当てることも可能です。
マシンのパフォーマンスを最大限まで引き出すツールの『Armoury Crate SE』
Windows 11の起動時にはOSにログインする必要がありますが、本機では電源ボタンに指紋センサーが内蔵されており、基本的にボタンを押すことでログインまで済ますことができます。Windows 11が立ち上がった後は、自動で『Armoury Crate SE』と呼ばれる専用ソフトが起動するといった流れです。
この『Armoury Crate SE』は、大きく分けて「Game Library」、「設定」、「コンテンツ」といった3つの機能を備えた『ASUS ROG Ally』専用のツールです。「Game Library」はいわゆるランチャー的な役割を持っており、本機にインストールしたゲームを登録することができるほか、こちらから直接ゲームを起動することができます。ある程度自動で登録してくれるほか、ゲーム以外にもよく使用するツールなども自分で追加することも可能です。
『Armoury Crate SE』の上部にあるタブを「設定」に切り替えることで、本体の細かい設定が行えます。その中にある「コントロールモード」で「構成」を選ぶことで、コントローラーのボタンなどに関する情報を変更することが可能です。また、ボタンの光り具合を変更することもできるほか、ショートカットメニューとして表示される「コマンドセンターの編集」もこちらで行えます。
中でも重要な項目が、「オペレーティングモード」です。ちょっと字面からはどんな機能なのかわかりにくいですが、こちらはマシンが動作するときのパワーを設定できるというものです。数値が高いほど高パフォーマンスになるものの、バッテリーの消費が激しくなります。その逆で、バッテリーの持ちを重視したいときは多少パフォーマンスを犠牲にして設定するといったこともできるようになっています。
Windowsの初期設定に加えて、「サイレント(TDP10W)」、「パフォーマンス(TDP15W)」、「Turbo(TDP30W)」といった感じで設定が可能で、もっともパフォーマンスを出したいときはアダプターを接続した状態で「Turbo」モードを選ぶのがおすすめです。
『Armoury Crate SE』の上部にあるタブを「コンテンツ」に切り替えると、本機に関するコンテンツの設定が行えます。「アップデートセンター」でデバイスのアップデーターを入手することができるほか、メディアギャラリーでスクリーンショットや録画したデータを見ることもできます。
こちらで注目なのが「ゲームプラットフォーム」です。本機にはあらかじめ「Steam」と「Xbox Game Pass」がインスト-ル済みになっていますが、それ以外のEA ApptやEpic Gamesといった主要なPCゲームプラットフォームもこちらで追加できるようになっています。
『Armoury Crate SE』の「設定」で選んだ項目は、十字キーの近くにある「コマンドセンターボタン」を押すことで、好きなタイミングでメニューを表示することができます。こちらで「オペレーティングモード」を切り替えることができるほか、ゲームがどのぐらいのパフォーマンスで動いているのかモニターできる「リアルタイムモニター」の表示も行えます。
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コンピュータホビー雑誌「ログイン」の編集者やドワンゴでモバイルサイトの企画・運営等を経て、2014年よりフリーで活動中。XRやPCなどのIT系やゲームをメインに、年間120本以上の取材をこなしています。